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毎日新聞 2023/5/2 10:30(最終更新 5/2 10:42) 812文字
水素エネルギーで製造されたタイヤの前で燃焼システムを説明する住友ゴム工業白河工場社員=福島県白河市双石広久保で2023年4月19日、根本太一撮影
住友ゴム工業(神戸市)が日本で初めて、白河工場(福島県白河市)で二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロに抑えるタイヤ量産製造に成功した。生産工程に欠かせない熱発生源のエネルギーを天然ガスから水素に転換させた独自工法を採用し、脱炭素の意識が高い欧州の乗用車向けに出荷を始めている。同社はカーボンニュートラル(二酸化炭素排出実質ゼロ)の実現に向け、2035年までに国内全工場での導入を目指す。
一般的にタイヤを造る際は、ゴムに硫黄を混ぜた上で、約200度の水蒸気を浴びせて強度を増すための化学反応を引き起こさせ、さらに型に流し入れて電力でプレスし、表面に「溝」を刻み込む作業があるという。
日本自動車タイヤ協会によると「標準的な低燃費タイヤ」1本を造るに当たって排出される温室効果ガスは、二酸化炭素に換算して6・6キロ。住友ゴムはこの工程で、ガスに代わって水素を燃やす技術を導入した。電力も自社の太陽光パネル発電で賄うため、二酸化炭素の排出削減量を年1000トンと試算。白河では30年までに、国内向け乗用車やバス、トラック用タイヤも全て水素で製造する。
山本悟社長は、4月19日に同工場であった式典で「水素を利用した高精度の工程で、カーボンニュートラルに一歩を踏み出した」と述べ、35年までに国内の全工場で「白河モデル」を導入する計画を明らかにした。
白河工場で使う水素は浪江町の「福島水素エネルギー研究フィールド」など県内3カ所で生産されたものを圧縮し、トレーラーで運んで来る。「現状で、調達コストは天然ガスに比べて割高だが、水素エネルギーの普及に伴って低価格になり、液化して効率よく運搬することも可能」と同社担当者は見込む。
式典で内堀雅雄・福島県知事は「福島産の水素を福島の工場で消費する。太陽光発電も活用されるクリーンなタイヤは原発事故から12年の福島から世界に向けた素晴らしいメッセージだ」とあいさつした。【根本太一】