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毎日新聞2024/4/17 東京朝刊847文字
米西部ロサンゼルスの連邦地裁に出廷した水原一平容疑者=法廷イラスト、AP
ギャンブル依存症の怖さをまざまざと見せつけられた。
米大リーグ、ドジャースの大谷翔平選手の元通訳で、違法なスポーツ賭博をしていた水原一平容疑者の事件である。銀行詐欺容疑で米司法省に訴追された。
開幕戦を前に記者会見に臨むドジャースの大谷翔平選手(右)と当時通訳を務めていた水原一平容疑者=ソウル市内で3月16日、坂口裕彦撮影
借金返済のため、大谷選手の口座から1600万ドル(約24億5000万円)以上を違法なブックメーカー(賭け屋)に不正送金した疑いが持たれている。詐欺の手口から、当局は大谷選手を被害者とみている。
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水原容疑者は球団から解雇される前、チームメートに「ギャンブル依存症」であることを告白したという。耳を疑うのは、捜査で浮き彫りになった実態である。
2021年12月から約2年間に合計約1万9000回、1日平均で25回も賭博を繰り返していた。日本円にして勝ち分は総額218億円、負けた金額は280億円に上るとみられている。
身近な人気競技が対象のスポーツ賭博は、ギャンブルの入り口になりやすい。デジタル技術で瞬時にデータが分析されるため、勝敗だけでなく、個人成績やプレーにも賭けられる。
カジノに行く必要もなく、スマートフォンやパソコンさえあればできる手軽さが、ギャンブル依存症に陥る危険性を高める。
賭け事にのめり込んで自分をコントロールできなくなる。借金を重ねて家庭が崩壊するケースも後を絶たない。
米国では18年に最高裁が州の判断でスポーツ賭博を合法化できる判決を下し、現在は全米50州のうち38州で解禁されている。
ドジャースが本拠地を構えるカリフォルニア州のように、認められていない地域では違法な賭け屋が暗躍しているとされる。
欧米では選手の関与が疑われる例も数多く報告されている。スポーツ関係者が自らの競技に賭ければ、八百長が起きる恐れもあり、公正さが損なわれかねない。
日本でも経済産業省の研究会などでスポーツ賭博を解禁し、事業者からの税収をスポーツ振興に回す案が議論されている。
だが、諸外国に比べ、日本はギャンブル依存症が疑われる人の割合が高いとのデータもある。リスクを軽視してはならない。