|
毎日新聞 2023/7/12 18:00(最終更新 7/12 18:00) 635文字
光量子コンピューターでかけ算を可能にするために開発した電子回路=理化学研究所提供
理化学研究所と東京大の研究チームは12日、開発中の次世代計算機「光量子コンピューター」でかけ算や割り算ができる仕組みの実証に成功したと英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(電子版)に発表した。これまで実現していた足し算と引き算に加え、四則演算が可能になり、チームは「最後のピースがそろった」と話す。
量子コンピューターは、計算を担う「量子ビット」に電子を使うタイプが既に開発されているが、光量子コンピューターは光(光子)を使用する。常温で高速計算が可能なため、より汎用(はんよう)性のある計算機として期待されている。
光の波の性質を利用して、足し算や引き算などができることはこれまで分かっていたが、かけ算と割り算は実現できていなかった。
互いに影響し合う「量子もつれ」状態にした光の粒の片方を操り、もう片方を測定することで光量子コンピューターの計算は成り立つ。ところが、操作から測定まで文字通り光の速さで行うことが難題だった。
チームは、あらかじめ基本的な計算を電子基板に書き込んでおくことで、ナノ秒(ナノは10億分の1)単位の高速計算を実現させた。かけ算など216万通りの計算を解かせ、結果を確かめたところ、99%以上の精度で正解と一致したという。
理研の古澤明・光量子計算研究チームリーダーは「実機を作るにあたって必要な原理実証は全てそろった」と説明。今後本格的な開発に入り、「1000量子ビット相当の実機を1年後に公開することを目指す」と語った。【松本光樹】