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眠気覚ましにコーヒーを飲む人は多いが、コーヒーの覚醒作用は、カフェインだけによりもたらされるわけではないようだ。ジャウメ1世大学(スペイン)のMaria Picó-Pérez氏らが実施した研究で、カフェインを摂取しただけでは、コーヒーを飲んだときに得られる効果の一部しか得られないことが明らかにされた。この研究の詳細は、「Frontiers in Behavioral Neuroscience」に6月28日掲載された。
この研究では、コーヒーの覚醒作用が、コーヒーに含まれているカフェインによるものなのか、それともコーヒーを飲むという行為が関与しているのかが検討された。コーヒー摂取の効果を検討する対象者として、ポルトガルの一般集団から、コーヒーを1日1杯以上飲む人47人(平均年齢30±7.9歳、女性31人)を抽出して試験参加者として登録し、コーヒー摂取の効果について検討した。また、36人(平均年齢32.1±11.1歳、女性27人)から成る別グループを設け、カフェインのみを摂取した場合の効果を検討した。参加者には、試験のために研究室に入室する前の少なくとも3時間は、カフェイン入りの飲料や食べ物の摂取を控えてもらった。入室後に参加者の社会人口学的属性に関するデータを聞き取り調査し、その後、85mgのカフェインを含有するコーヒー、または同量のカフェインをお湯に溶かしたもの(以下、カフェイン水)を摂取してもらい、摂取前と摂取から30分後の2回にわたって脳の機能的MRI(fMRI)検査を行った。
その結果、コーヒーを摂取した場合でもカフェイン水を摂取した場合でも、安静時に活動し、内的思考に関わる脳の回路であるデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)の結合性は低下することが示された。しかし、コーヒーを摂取した場合には、それと同時に、視覚の高次領域間の結合性や右側の実行制御ネットワーク(RECN)のノード(領域)間の結合性が増加することも確認された。これらは、作業記憶や認知機能、目的指向行動などに関与する脳の領域である。これらの結果は、単に覚醒するだけでなく、何らかの行動を開始する準備を整えるためにはカフェインの摂取だけでは不十分であり、1杯のコーヒーを飲む必要があることを示唆する。
「コーヒーを飲む」行為自体で心理的効果を得られる可能性
Picó-Pérez氏は、「コーヒーを飲むことで得られる効果の一部が、カフェイン水の摂取によっても再現されたことを考えると、他のカフェイン含有飲料でも同様の効果を得られることが予想される」と話す。同氏はその一方で、「しかし、その他の効果は、コーヒーを飲むことによってのみ得られるものだった。おそらくそれらは、コーヒー特有の香りや味、あるいはコーヒーを飲むことに伴う心理的な期待などの要因によってもたらされるのだろう」との見方を示している。
研究グループは、「カフェインレスコーヒーを飲んでも、コーヒーを飲んだ場合と同様の効果を得られる可能性がある。もしそうであるなら、コーヒーを飲むことはプラセボ効果として作用していることになる」と指摘している。研究グループは別の可能性として、「コーヒーを飲む人が主張する効能は、実際にはカフェインによる禁断症状の緩和によるものかもしれない」と話す。一方で、論文の上席著者である、ミーニョ大学(ポルトガル)のNuno Sousa氏は、「対象者間でカフェインの代謝に個人差がある可能性も考えられる。今後、その点を調べるのも興味深いだろう」と話している。
Sousa氏は、「一般的に、コーヒーには覚醒度を高め、精神面や運動面の機能を向上させる効果があると考えられている。われわれが、この生物学的現象の根底にあるメカニズムをよりよく理解することができれば、それを調節している可能性のある因子を見つけられ、さらにはそのメカニズムから得られる潜在的な利益を追求する道も開けるだろう」と話している。
(HealthDay News 2023年6月28日)
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