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近年、新型コロナウイルス感染症の影響からマスク着用が当たり前のようになっていました。しかし、今年5月から分類が5類になり、徐々にマスクを外す人が増えてきました。マスクをせずに会話できる喜びから笑顔が見られ、それと同時に歯も見えるようになってきました。「歯は白い方が美しい」と感じている皆さんもいると思います。そこで今回は歯のホワイトニングすなわち漂白のお話をさせていただきます。
歯のホワイトニングというと、専門的には漂白、ラミネートベニヤ(歯の表面に白い板を貼ること)、歯科衛生士によるクリーニング、歯のマニキュア、ご自身での歯のクリーニングなどの総称を指します。一般的には「ホワイトニング=漂白」と理解されていると思われますので今回は「ホワイトニング」で統一します。
ホワイトニングの種類は3種類
ホワイトニングには三つの種類があります。歯科医院で受診するオフィスホワイトニング(以下、オフィス)、自宅でマウスピースを使用して行うホームホワイトニング(以下、ホーム)、壊死(えし)し変色している歯を白くするウオーキングブリーチ(以下、ウオーキング)の方法があります。
・ホワイトニングに用いられる薬剤 オフィスで用いられる主な薬剤は35%過酸化水素水、ホームでは10%過酸化尿素、ウオーキングは35%過酸化水素と過ホウ酸ナトリウムを混ぜたペーストを用います。
・適用範囲と年齢 ホワイトニングはおおむね、上顎(うわあご)、下顎とも左右の第1小臼歯(八重歯の奥の歯)間の計8本を対象とします。また乳歯は対象外です。施術可能な年齢は18歳ぐらいからです。
・厚生労働省が認可しているホワイトニングに関する商品 厚労省の認可の意味は「歯科医師の責任の下、使用する場合において効能と生体安全性が担保されている」ということです。また、ホワイトニングは美容医療であり、特定商取引法の範疇(はんちゅう)にもなっております。現在認可されている商品は、オフィスでは「ウルトラデント社オパールエッセンスBOOST」「松風ハイライト」「GC社ティオン」「三菱ピレーネ」の4種類。ホームは「ウルトラデント社オパールエッセンス」「ウルトラデントGO」「松風社ハイライトシェードアップ」「GC社ティオンホーム」「NITEホワイトエクセル」の5種類。また、ウオーキングは市販の薬剤がないため、薬局方に基づいて過酸化水素水や過ホウ酸ナトリウム粉末を購入し、歯科医師の責任の下で使っているのが現状です。
ホワイトニング前には診査が必要
ホワイトニングの施術前には、必ず術前診査が必要です。なぜなら、人によって歯の色や歯並び、顔の形など千差万別だからです。これらを踏まえて、まず、歯科衛生士による歯のクリーニングを行います。これは歯石やプラークなどの汚れはもちろん、コーヒーやカレー、赤ワインなどの着色を除去することを目的としています。
次に顔全体の写真(歯が見える笑顔の写真)、歯全体の写真を撮影します。その後は歯ごとに測色をします。これはホワイトニング前の明るさや黄ばみを記録しておくためです。その後、処置に入ります。
施術を方法ごとに解説します。オフィスはまず、ホワイトニングする歯の上の部分の歯肉を保護する薬を塗ります。ホワイトニングで使う薬剤がつくことを防ぐためです。その後、漂白剤のペーストを歯に筆で塗っていきます。塗り終わったら、専用の機器で光の照射を繰り返します。これを週に1回、4~5回ほど続けます。効果が出てきたら再び測色をして、変化があれば終了です。
ホームは、歯列の型をとって石こう模型を作成します。その後、歯の表面にホワイトニングの薬剤がとどまるように細工し、マウスピースを作成します。
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ウオーキングはまず、歯の裏側の治療痕跡から材料を取り去ります。そこに過酸化水素水と過ホウ酸ナトリウム粉末を混ぜたペーストを入れて、ふたをする作業を歯の色が変わるまで繰り返します。
ホワイトニングには副作用も
ホワイトニングの施術を始めると、人によっては歯がしみるなどの症状が出ます。この症状を総称し、知覚過敏症と言います。この原因は全体にしみる場合は、歯と歯肉の境目に痛みの感覚がある「象牙質」が露出している場合に多く出ます。1本だけしみる場合には、歯の表層にヒビがあると考えられます。いずれにせよ、これを防ぐためには、ホワイトニングを行う前に知覚過敏を抑える薬剤を塗ることをお勧めします。
歯のホワイトニングは、虫歯や歯周炎などの口の中の病気を取り除いた後に処置します。そのため、処置後は歯が虫歯になりにくくなることも確認されています。白い歯をアピールして笑顔を取り戻しましょう。
(真鍋厚史・昭和大歯学部歯科保存学講座美容歯科学部門)