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毎日新聞2024/6/19 東京朝刊629文字
昨年9月、ロシア極東地域を訪問した北朝鮮の金正恩総書記(左)と握手するプーチン露大統領=AP
2000年7月の九州・沖縄サミットの際、首脳会談を前に握手する森首相(右)とロシアのプーチン大統領=沖縄県名護市内のホテルで23日午後2時25分、山下浩一撮影
「20年来、柔道をやっていて、日本を愛さずにはいられない」。こんな言葉で始まったのがプーチン露大統領と日本の関係だ。2000年5月の就任後まもなく沖縄サミット(主要国首脳会議)に登場し、現地の柔道大会に飛び入りして中学生に投げられてみせた▲第一印象は悪くなかったが、親日派ぶりは無論、リップサービスだろう。「このままだとロシアの極東地域は中国語や朝鮮語、日本語を話し始める」。来日直前には経済の立ち遅れに危機感を示していた▲北京から平壌に入り、極東視察をはさんで訪日する日程を組んだ。中国、北朝鮮首脳との意思疎通を背景にロシアを「準メンバー」にとどめていたG7各国と渡り合う狙いが色濃かった▲それ以来の北朝鮮訪問だ。プーチン氏はかつての首脳たちが表舞台から姿を消した中、ただ一人長期政権を続ける。一方で国際環境は全く変わった。クリミア併合やウクライナ侵攻で冷戦後のロシアとG7の協調は姿を消した▲24年前には金正日(キムジョンイル)氏からミサイルの自力開発断念を示唆する発言を引き出した。しかし、息子の金正恩(キムジョンウン)総書記には砲弾などウクライナで不足する武器を請う立場だ。見返りがロケットの技術協力という。そこは誤算だろう▲20世紀最後の年は東アジア情勢が前向きに動き、初の南北首脳会談も実現した。どこで進路が狂ったのか。第一次大戦後に新秩序構築に失敗した「戦間期」に例える見方もあるが、まだ修正は可能だ。プーチン氏に誤算の大きさを自覚させたい。