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毎日新聞 2023/9/28 04:15(最終更新 9/28 04:15) 1127文字
マタタビの葉に反応する猫=岩手大提供
猫の大好物と言えばマタタビ。でもマタタビに酔ったようになる猫の姿に「依存性はないの?」と心配する人もいるのではないだろうか。猫がマタタビに特異な反応を示す生物学的意義を研究してきた岩手大などのグループがこの疑問に答え、オンライン科学誌に論文掲載した。その成果とは……。
岩手大農学部の宮崎雅雄教授(生化学)や大学院生の上野山怜子さん(26)らは、研究室で17匹の猫を飼いながら、マタタビとの関わりなどについて研究している。
グループはこれまでに、猫がマタタビに反応すると、幸せを感じた時に脳内で働く物質の血中濃度が上がること▽猫の体にこすりつけたマタタビの成分が蚊よけの役割を果たしていること――などを次々と突き止め、注目を集めた。
マタタビを与えられた猫は、なめたりかんだり、体をこすりつけたりして酔ったような「マタタビ踊り」をすることが知られる。ペットショップやホームセンターなどにマタタビの実や枝を乾燥させて作られた商品も販売されている。
一方、マタタビによる依存性や毒性に関する研究成果はなかったため、グループが行動試験と血液検査をして調べた。
依存性のテストでは、10匹にマタタビの葉の抽出物を4時間与え、猫の行動を観察。マタタビによる依存症があるとすれば、猫が抽出物に接触し続けるはずだと予測した。
しかしマタタビに接触したり、反応を示したりした時間は10分程度にとどまった。時間の経過とともに、次第に興味を失う傾向もあり、グループは依存性はないと結論づけた。
毒性については最長で約3年間、マタタビを与えた13匹を血液検査し、肝障害や腎障害の指標を調べた。
その結果、マタタビを与えた後も指標はいずれも正常値にとどまり、マタタビ反応を長く経験しても値が上昇するような傾向も、統計的に見られなかったという。
猫にマタタビを与えた際の依存性や毒性について「安全性は高い」とする研究成果を発表した岩手大の記者会見=盛岡市で2023年9月26日、釣田祐喜撮影
宮崎教授は研究成果について「愛猫に安心してマタタビを与えられる科学的根拠を初めて示すことができた」と強調。過去の研究から、マタタビが猫の「多幸感」につながる可能性にも触れ、「猫にとってポジティブな作用をもたらす、安全性の高い」ものと位置づけた。【釣田祐喜】
猫リラックススプレー開発
マタタビ研究にヒントを得て、猫をリラックスさせるマタタビスプレーも開発された。
岩手大のチームは研究の過程で、乾燥したマタタビの葉から有効成分を濃縮する手法を開発。これを元に、動物病院向けの保湿剤や消臭剤などを開発・販売する株式会社「Nrf2(ナーフツー)」(東京都渋谷区、藤田祥文社長)が商品化した。
岩手大の研究成果を生かし開発・販売される猫用のマタタビスプレー=盛岡市で2023年9月26日、釣田祐喜撮影
猫の爪とぎやおもちゃなどに振りかけて使い、猫をリラックスさせる効果があるという。税込みで定価は1000円。インターネットで28日から販売する。