|
毎日新聞 2023/11/30 00:00(最終更新 11/30 00:00) 733文字
被験者が思い浮かべた画像から復元した画像=量子科学技術研究開発機構提供
量子科学技術研究開発機構(QST)などの研究チームは30日、生成AI(人工知能)を活用して、頭の中で思い描いた画像をある程度まで復元することに世界で初めて成功したと発表した。成果は同日付の国際専門誌「ニューラルネットワークス」に掲載される。
脳の活動から画像を復元する研究はこれまでもあった。しかし従来は、実際に画像を見ている時の脳活動からの復元や、顔や文字、簡単な図形など種類を特定した上での復元に限られていた。今回の成果は、風景や複雑な図形など思い浮かべたあらゆる画像の復元が可能という。
Advertisement
研究チームはまず、被験者に1200枚のさまざまな画像を見せ、機能的磁気共鳴画像化装置(fMRI)で各画像を見ている際の脳活動を記録した。一方で、AIにもこれらの画像を認識させ、色や形、質感など約613万の指標からなる「採点表」を作成。脳活動の記録と採点表を照合させ、新たな脳活動の記録を入力すれば新たな採点表が出力されるプログラム「脳信号翻訳機」を作成した。
復元前の画像。被験者はこの画像を見た30分~1時間後に頭の中で思い浮かべる=量子科学技術研究開発機構提供
次に、被験者に1200枚とは別の画像を見せ、30分~1時間後にどんな画像だったか思い出してもらい、その際の脳活動をfMRIで測定。得られた記録を脳信号翻訳機に入力して採点表を作った。その採点表を基に、別の生成AIに画像を復元させ、500回修正を繰り返させた。
その結果、復元画像から75・6%の正解率で元の画像を特定することができたという。従来手法だと正解率は50・4%でほとんど判別できていなかった。
言葉を介さない新たな意思伝達装置の開発などに役立つ可能性がある。QSTの間島慶研究員は「初めて人類が他人の頭の中をのぞき込んだ記念碑的な成果。研究をきっかけに心の中の理解が進めば」と話している。【松本光樹】