조용히 다가선 '수수께끼의 쓰나미' 정체는? 떠오른 미지의 해저 지형 / 上

[청소부]

静かに押し寄せた「謎の津波」正体は　浮かんだ未知の海底地形／上

垂水友里香 

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毎日新聞 2023/12/1 05:30（最終更新 12/1 05:30） 1958文字

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鳥島近海で発生した「謎の津波」

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　地震が発生するとP波（初期微動）と、続いてS波（主要動）が伝わる――。中学校の理科で習った記憶がある人も多いだろう。ところが10月、どちらの波形も明確に捉えられないまま、突然数十センチの津波が関東や四国、九州に押し寄せた。

　全2回の1回です。
第1回・静かに押し寄せた「謎の津波」正体は　浮かんだ未知の海底地形
第2回・予測不能の津波、発生源へ調査船は向かった　そこで見たのは
＜写真特集＞「謎の津波」のメカニズムは？ 図解で説明

　不思議な津波はどうやって起きたのか。研究者たちがさまざまな視点から真相を探り、太平洋の深海に未知の地形を見つけるまでの約1カ月半を追った。

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鳥島近海を震源とする地震があり、広い範囲に津波注意報が出た＝9日、気象庁ウェブサイトから

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遅れた注意報

　「原因となる地震の詳細が不明で、予測が難しい状態です」。10月9日午前、緊急記者会見に臨んだ気象庁の下山利浩・地震情報企画官は顔を曇らせた。

　午前6時40分ごろ、東京・八丈島で津波が観測され、気象庁は東京の伊豆諸島と小笠原諸島に津波注意報を出した。その後、注意報は関東から四国、九州にかけての広い範囲に出され、正午になってようやく全て解除された。

　通常、気象庁は地震発生から約3分で津波警報や注意報を出す。ところがこの日、津波注意報が出たのは地震発生から1時間以上もたった後だった。

　なぜ遅れたのか。その理由は、津波を引き起こした地震の規模があまりに小さかったことにある。

　地震は午前4～6時台に伊豆諸島の鳥島近海で起きた。だが気象庁は、詳しい震源やマグニチュード（M）を決めることができなかった。各観測点から地震計のデータを集めたが、地震で生じるP波もS波も十分に捉えられなかったのだ。

　「あまり見たことのない現象だ」。専門家たちは口をそろえた。検知できないほどの地震が引き起こした津波の正体は？　「犯人捜し」が始まった。

極めて小さな地震波

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第3の波

　気象庁はまず、地震計データの詳細解析を試みた。一見したところP波もS波も見当たらないデータでも、波形の振幅を30倍に拡大すると、ある上下動が見えてくる。通常は震源特定に使わない第3の波「T波」（TはTertiary＝「第3の」の意味＝の頭文字）だ。

　T波は水中を伝わる遅い波で、海底付近の地震で発生する。分析の結果、午前4時～6時半ごろに少なくとも14回、T波を発生させる小さな地震が繰り返し起きていたことが判明した。発生源は、鳥島の約76キロ南にある海底火山「孀婦（そうふ）岩」の西約30～50キロと推定された。

　東京大地震研究所の三反畑（さんだんばた）修助教（地球物理学）らの研究チームは、この14回の地震と、津波の波形を照らし合わせた。すると、14回のうち初回を除く13回と同じタイミングで津波が起きていたことが分かった。特に後半の6回は、津波が繰り返す間隔と波の周期がほぼ重なり、波高が約2倍に増幅されていた。初期分析の結果は10月31日、査読前論文としていち早く公表した。

第3の波「T波」分析で分かった微小な地震

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「犯人」は海底火山？

　鳥島近海には、活発な海底火山が数多く存在する。そのため、当初から火山の関与が疑われた。

　しかし、この海域の火山活動を長年監視してきた野上健治・東京工業大教授（地球化学）は津波発生後の取材に「孀婦岩付近は水深2000メートルを超える。水圧が高すぎて、一般的に大きな津波を起こすほどの海底噴火は起こらない」と首をかしげた。

　ところが約10日後、海上保安庁の航空機が鳥島の西約50キロの海上に、軽石とみられる浮遊物が点在しているのを見つけた。付着物が少なく、最近の火山活動で生み出された新鮮な軽石と分かった。

　政府の地震調査委員会によると、鳥島近海では10月2日から、孀婦岩より北西の「鳥島リフト」と呼ばれる場所で地震活動が活発になっていた。それが9日になって孀婦岩の西まで南下した。

　鳥島リフトは伊豆・小笠原諸島の東側の海溝の沈み込みに伴い、海底の地殻が引き伸ばされた谷状のくぼ地だ。海洋研究開発機構の藤江剛・地震発生帯研究センター長（海底地震学）は「地下のマグマが上がってきやすい場所。海底調査でも、過去にマグマの通り道が付近にあった可能性を示す、でこぼこした地形が見つかっている」と話す。鳥島リフトがマグマの供給源になった可能性がある。

地形図に痕跡が

　やはり海底火山の噴火が津波の原因なのだろうか。そうだとして、深い海底の噴火であれほどの津波が起きるだろうか。

　11月初め、三反畑さんは米海洋大気局のウェブサイトで一帯の海底地形図を眺めていて、ふと手を止めた。米国の大学が30年以上前に探査して作成した、ところどころが切れた不完全な地形図。だが、孀婦岩の西に、円弧を描くくぼんだ地形が見て取れた。

　三反畑さんは頭を抱えた。「なぜ見落としていたんだ……」【垂水友里香】