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毎日新聞2024/7/2 06:00(最終更新 7/2 06:00)有料記事1610文字
澤山あずささん(左)から自然栽培で規格外となった豆を受け取る三ツ山朋美さん=北海道清水町で2024年6月25日午後1時40分、貝塚太一撮影
「トマトのわき芽もかわいいでしょ」「細かく切って混ぜたら、紙の色は黄色になるよね」。自然栽培をする農家と楽しそうに話をする三ツ山朋美さん(44)。廃棄される葉や規格外の野菜と、再生紙を混ぜて生まれる紙「やさいくるペーパー」を作るデザイナーだ。
食料自給率1100%を誇る農業王国・北海道十勝地方。三ツ山さんは「サステナブル(持続可能)で、十勝地方ならではのものを生み出せたら」と2019年、地元企業などが主催する起業支援プログラムに参加した。野菜をリサイクルした、やさいくるペーパーで作られた名刺のプレゼンをすると、すぐに依頼が舞い込み、起業した。
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古紙とトウモロコシのひげから生まれた三ツ山朋美さんの名刺(画像の一部を加工しています)=北海道音更町で2024年1月29日午前11時29分、貝塚太一撮影
しばらくは子育てをしながら自宅で活動していたが、今は廃校になった音更町の小学校の元理科室を拠点にしている。
やさいくるペーパーは、三ツ山さんの考えに共感する農家から譲り受けたトウモロコシのひげやタマネギの皮、豆類などと、学習塾から出る古紙を混ぜて作られる。野菜の繊維の模様や色が入り、一つとして同じものは生まれない。模様が一枚一枚異なるオンリーワンの名刺になるのだ。
カットされたトマトのわき芽=北海道清水町で2024年6月25日午後1時28分、貝塚太一撮影
名刺のことが掲載された地元のフリーペーパーを見て、すぐさま依頼してきたのが、清水町で自然栽培に取り組む「SAWAYAMA FARM(さわやまファーム)」の澤山あずささん(34)だ。農家出身の澤山さんは、規格外や廃棄せざるを得ない野菜にフォーカスを当てた農業をしたいと考えていた。その中で出会い、結婚したのが、自然栽培に挑んでいた農場の社長である直樹さん(37)だ。この地に120年前に入植した農家の5代目となる。
直樹さんは19歳で就農して以降、体調不良に悩まされてきた。原因を考えていくと、農薬や化学肥料の調合・散布が多い時期に集中していた。自然栽培を学び、11年前に有機栽培の認証を取得。今では20ヘクタール(東京ドーム約4個分)の農地にまで広げている。
やさいくるペーパーで作る名刺の存在を知った澤山さんは「リサイクルした野菜で、しかも地元の十勝!」と喜び、見積もりもせずに注文した。「いま自分たちのもとにあるのは豆だけなんですが」と伝えたが、三ツ山さんは早速名刺を作って届けた。そこから交流は続いている。
黒板に張られた、名刺に使用する野菜。品目は農園ごと=北海道音更町で2024年1月29日、貝塚太一撮影
生まれているのは共感