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毎日新聞 2024/1/7 11:53(最終更新 1/7 20:20) 956文字
米宇宙企業アストロボティックの月着陸船「ペレグリン」が月面に着陸したイメージ図=同社提供・AP
米国の民間宇宙企業アストロボティックの無人月着陸船「ペレグリン」が、8日に米南部フロリダ州ケープカナベラル宇宙軍基地から打ち上げられる。2月半ばには別の米企業も月着陸船を打ち上げる予定だ。いずれも民間初の月面着陸を目指しており、成功すれば米国としては1972年のアポロ計画終了後初めてとなる。
米航空宇宙局(NASA)が機材や貨物の月への輸送を民間に委託する「商業月面輸送サービス(CLPS)」の一環。ペレグリンの名称は、世界最速の鳥類ハヤブサの英名(ペレグリン・ファルコン)に由来する。航空機大手のボーイングとロッキード・マーチンが設立した「ユナイテッド・ローンチ・アライアンス」の新型ロケットで打ち上げられる。2月下旬の着陸を目指す。
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積み荷にはNASAが開発した科学機器のほか、「宇宙葬」を提供する企業が用意したカプセルも含まれている。米メディアによると、カプセルには、SF宇宙ドラマ「スター・トレック」の生みの親であるプロデューサー、ジーン・ロッデンベリーさんの遺灰や、ケネディ元大統領ら3人の大統領経験者の毛髪などが収められており、月面に置かれるという。
これに対し、月を神聖視する米国の先住民ナバホ族は、遺灰などを月に堆積(たいせき)させる行為は「神聖な空間の冒とく」だとして、NASAに打ち上げ延期を要請している。ただ、NASA側は「商用ミッション」であることを理由に容認する構えだ。
アストロボティックと民間初を競う米インテュイティブ・マシーンズの月着陸船も2月半ばに打ち上げを予定している。向かう軌道の違いから、月への到着にかかる時間はインテュイティブ社の方が短いとされ、同社が先に月面着陸に成功する可能性もある。
月面探査・開発に向けた動きは近年、世界で活発化している。
日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)の探査機「SLIM(スリム)」は月の周回軌道への投入に成功し、今月20日に日本初の月面着陸を目指す。インドは23年、日本に先駆けて探査機「チャンドラヤーン3号」の月面着陸に成功。旧ソ連、米国、中国に次いで月面着陸を達成した国となった。民間では、日本の宇宙企業アイスペースが22年に民間初の成功を目指して着陸船を打ち上げたが、最終段階で燃料が尽きて失敗した。【ニューヨーク八田浩輔】