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毎日新聞 2024/1/25 20:58(最終更新 1/25 21:41) 781文字
小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」が着陸後に搭載カメラで撮影した月面の写真=2024年1月20日(JAXA提供)
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は25日、20日未明に月面着陸した小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」について、誤差100メートル以内のピンポイント着陸に成功したと発表した。着陸直前に分離した小型ロボット「LEV―2」が撮影した、月面に降り立ったSLIMの画像も公開した。
昨年9月に鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられたSLIMは、日本時間20日午前0時20分ごろ、月の赤道南側の「神酒(みき)の海」のクレーター付近に着陸した。着陸後のデータなどを調べた結果、着陸地点は目標の約55メートル東だった。
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SLIMは月面を撮影しながら自身の位置を推定すると同時に、あらかじめ用意した月面地図と照合しながら障害物を避け、自律的に安全な着地点を探した。この動作を繰り返した結果、障害物を避ける前までの推定誤差は約3~4メートルと極めて高い精度だったという。従来の月探査機の着陸精度は誤差数キロ~数十キロレベルだった。
一方、SLIMは月の上空50メートルまで順調に高度を下げた後、2基あるメインエンジンの一つが何らかの異常で脱落していた。着地する際の水平方向の速度が想定範囲を超え、エンジンが上向きになり90度傾いた姿勢で着陸した。機体に目立った損傷は確認されなかったが、太陽電池パネルが西側を向いたため、太陽光が当たらず発電できなかった。バッテリーを切るまでの約3時間に、飛行時の画像やデータのほか、分光カメラで撮影した月面のスキャン画像257枚を地球に送信した。
アクシデントに見舞われながらも高精度の着陸に成功した結果を受け、記者会見したJAXAの坂井真一郎プロジェクトマネジャーは「自己採点は100点満点。これまで誰も行けないと思っていた所に着陸し、今後は『行けるはずがない』と思うことができなくなった。新しい扉を開いた」と笑顔で語った。【田中韻】