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毎日新聞2024/2/8 14:58(最終更新 2/8 14:58)774文字
衛星からの観測データと通常との変化から不法投棄を発見する仕組み=広島県の資料から
広島県は8日、2024年度から合成開口レーダー(SAR)を搭載した人工衛星のデータを利用し、山林などへの廃棄物の不法投棄を監視するシステムを国内の自治体で初めて導入すると発表した。これまでは住民からの通報や人力でのパトロールに頼るほかなかったが、春以降は宇宙からの目が力を貸してくれる。
SAR衛星は、電波を地球に向けて照射し、反射を解析して地表面の様子を調べる。県は費用対効果を考えて無料で得られる地表面の観測データと比較し、不自然な変化から不法投棄の兆しをつかむシステムを作り上げた。10日ほどの周期でデータを更新し、システムが変化を知らせたら、実際に現地へ行って不法投棄を確認する仕組みだ。県の担当者は「夜間でも曇天でも問題なく監視できる。人工衛星で監視していることを広く周知し、不法投棄を未然に防ぎたい」と意気込む。
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近年、広島県で1カ所に10トン以上の不法投棄があった事例は、2011年の9件から減少傾向にあり、22年度はゼロだった。監視と周知を重ねた成果でもあるが、産業廃棄物対策課は「たまたまゼロになったが、10トン未満の不法投棄もあり、引き続き監視する必要がある」という。これまでの監視は人力頼りで、担当者は「そもそも不法投棄は目に付きにくいところでされるので、常に見て回るのは限界があった」と話す。
そこで民間事業者が提案した宇宙からの監視に注目し、21年度から実証実験を開始。システムに過去のデータを入力すると、実際に発見された不法投棄現場をシステム上で見つけることができたため、本格運用に踏み切った。今後、現地確認の結果を基にシステムの精度を上げるという。
県は新年度予算にシステムの運用に600万円、改良などに400万円を計上。将来的には監視をシステムに任せ、人的資源は現地確認や指導などに注力させたいという。【矢追健介】