|
毎日新聞2024/7/26 東京朝刊609文字
1896年アテネ五輪・陸上100メートルのスタート。左から2人目が優勝したアメリカのバーク 1人だけクラウチングスタートでフォームがちがう
パリ五輪の開会式でパレードが行われるセーヌ川=2024年7月18日午前9時半、長澤凜太郎撮影
ギリシャの古代オリンピックは麦の収穫を終えた夏に行われたという。諸説あるが、夏至の後の最初か2番目の満月前後というから7~8月に当たる。炎天下の五輪開催は米プロスポーツとの競合を避けたい米テレビ局の意向ともささやかれるが、伝統でもあるわけだ▲国連の五輪停戦決議もしきたりにならったが、実効性は落ちた。「エケケイリア」と呼ばれた「聖なる停戦」は宗教的権威を伴い、強国も服従した。だが、ロシアはお構いなしにクリミアを併合し、ウクライナに侵攻した▲ロシアには国家としての参加を認めない制裁が科されたが、ガザを攻撃するイスラエルはおとがめなし。欧米が主導してきた国際オリンピック委員会(IOC)の二重基準も問われている▲パリ五輪が日本時間27日未明に開幕する。IOCのバッハ会長は総会で国際社会の分断などを挙げて「五輪の価値がかつてなく重要になっている」と強調した。だが、五輪そのものも曲がり角にある▲1896年の第1回アテネ五輪後、当時のギリシャは恒久開催を望んだという。しかし、近代五輪の生みの親、クーベルタン男爵は「ギリシャにその力はない」と考え、第2回をパリで開催した▲近年、ギリシャに五輪の原点復帰を目指す市民団体が組織されたそうだ。ギリシャを恒久開催地とし、4年ごとに異なる国の都市と共催しようという構想だ。巨額の開催費用を考えれば検討に値するのではないか。そんな将来像も念頭に置いて17日間の熱戦を見守りたい。