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毎日新聞2024/7/30 東京夕刊有料記事892文字
ロサンゼルス・ドジャーズのチーム名の由来をつづった米ブルームバーグ通信のこんな記事も=小国綾子撮影
先日、「堂々と『ドッジ』しよう」というコラムを本欄で書いた。ドッジボールにまつわる子ども時代の思い出や、いじめとの関係を指摘する海外の論争、さらにはドッジ(dodge)が「ボールを当てる」ではなく「身をかわす」という意味だった話など。
身近な話題だったからか、本社にも結構反響があったらしい。私の元にもいろんな声が届いた。多かったのは「ドッジ」の意味を初めて知った、という驚きの声。それから「好きな女の子にわざと当てたなあ」などの思い出話。また、私と同じように球技が苦手だった人からは、「私もドッジボールが大嫌いでした」という告白も。でもその中に、全然知らなかった話があった。
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米国在住の野球ママ友だちから「大谷翔平選手のいるロサンゼルス・ドジャースのチーム名も『身をかわす』から来てるんだよ」。えっ、そうなの?
早速、米大リーグのウェブサイトや米紙の過去記事でチームの歴史を調べてみた。それによると、ドジャースは元々、ニューヨークのブルックリンの野球チーム。ブルックリンの狭い道路をかつて走っていたトロリーバスにぶつからないよう、野球ファンはバスをかわしながら球場に向かった。そんな風景のせいで球団の名前は一時、「トロリー・ドジャース」だったという。「トロリーから身をかわす人たち」という意味だ。
バスをひらりひらりとかわす野球ファン、というと和やかだが、実際は深刻だった。ジョセフ・サリバンという歴史学者が雑誌に「トロリーの恐怖」という記事を書いている。1890年代に登場した電気で走るトロリーバスは、馬の引く荷車よりずっと速くて、交通事故が頻発した。特にブルックリンでは多くの子どもたちが事故の犠牲になったそうだ。
野球だけでなく、サッカーファンからは「サッカーにドジングという言葉があるよ」と連絡をもらった。これも「ドッジ」から来た言葉。1対1で相手をたくみにかわす練習らしい。
そんなわけで「ドッジ」についてあれこれ調べ、いろんな発見をするうちに、子ども時代のドッジボールの古傷も多少は癒えた気がしている。反響をくださった皆さま、ありがとうございます。(オピニオン編集部)