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毎日新聞2024/8/22 08:30(最終更新 8/22 08:30)1231文字
森中高史市長(左下)にロボットの特徴を説明するエッジのメンバー=守山市役所で2024年8月5日午前10時41分、礒野健一撮影
7月にオランダ・アイントホーフェンで開催された「ロボカップジュニア世界大会」で、立命館守山高(滋賀県守山市三宅町)サイテック部のチーム「Edge(エッジ)」が世界一に輝いた。自ら開発した自律移動型ロボット2台によるサッカーで優勝し、英語でのプレゼンテーションや質疑応答も含め評価された。生徒たちは「ただただ、うれしい。多くの人のサポートで世界一が取れた。この経験や技術を後輩や子供たちに還元していきたい」と喜んでいる。【礒野健一】
エッジのメンバーはいずれも2年で、回路担当の渡辺幸大朗さん(17)、プログラム担当の中川裕太さん(17)、機体加工担当の青木良亮さん(17)。立命館守山中3年時にチームを結成し、昨年も世界大会に出場。4位の成績を残したが、渡辺さんは「表彰台に上がる他の日本チームを見て悔しさが募った。次は勝つぞと開発に取り組んだ」と語る。
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エッジのロボットは、内蔵した二つのカメラでボールを認識し、16個の赤外線センサーで相手の動きやコートのラインを読み取る。回路基板ははんだごてで手作りし、外装も3Dプリンターで自作した。開発に必要な部品を求めて、国内企業にメールで連絡を取るなどし、さまざまなアドバイスももらった。
競技は試合開始時にスイッチを入れるだけで、後は完全自律型ロボットがサッカーをするのを見守るのみ。事前の準備が全てを決める。ロボットを守備と攻撃に1台ずつ分ける戦略と、2台とも攻撃に出す戦略があるが、エッジは前者で戦い、今年3月の国内大会で優勝し、世界大会への出場権を獲得した。
世界一に輝いた「エッジ」のメンバー。(左から)プログラム担当の中川裕太さん、機体加工担当の青木良亮さん、回路担当の渡辺幸大朗さん=守山市役所で2024年8月5日午前11時3分、礒野健一撮影
世界大会は予選8試合を戦い上位4チームが決勝に進出する。しかし、ここでトラブルが発生した。コートの人工芝が日本より滑りやすく動きが制御しにくくなった上、会場の照明が強すぎてボールを認識しにくくなった。中川さんは「急いでプログラムを書き換え、ボールを補足するカメラには段ボールでカバーを取り付け対応した」と振り返る。
臨機応変な対応が功を奏し、エッジは予選リーグ8試合を6勝2敗の3位で突破し、決勝トーナメントに進出。準決勝でオーストラリアチームに圧勝し、マカオチームとの決勝は5―1で勝利した。
渡辺さんは「常にメンテナンスに気を使い、安定した動きができるよう心がけた。壊れたとしても簡単にパーツを取り換えられるよう、ネジの本数を減らすなどの工夫もした」と勝因を語った。
海外チームにロボットについて説明するエッジのメンバー(右から2人目)=立命館守山高提供
3人の表敬を受けた守山市の森中高史市長は「更に技術を磨いて世界に羽ばたいてほしい」と激励。ロボットを手に取り、高い技術力に感心していた。
ロボカップは「2050年までにサッカーのワールドカップチャンピオンチームに勝つ、自律型ロボットチームを作る」ことを目標に、世界中の若者たちが競い合っている。19歳以下が対象となるロボカップジュニアの世界大会は2回までしか出場権が与えられないため、3人は来年は受験に専念し、大学進学後にロボカップが掲げる目標の実現に向け挑戦するつもりだ。