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毎日新聞2024/8/28 東京朝刊有料記事1005文字
<sui-setsu>
おもちゃ業界に革命を起こした偉大な発明は1974年、ハンガリー・ブダペストにある大学の一室で生まれた。
建築学を教えていた教員が、学生のために27個の木のブロックを組み合わせ立方体の模型を作ってみせたのが始まりだ。
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教員の名前は、エルノー・ルービック。彼の模型を発展させた「ルービックキューブ」は世界で爆発的にヒットした。
時間を忘れて没頭してしまう不思議な魅力がある。1面9マスの6面構成で、各面に異なる色が塗られている。マスの組み合わせ次第で約4325京通りもの柄が作れるとか。1京は1兆の1万倍。途方もない数字だ。
ただ、何といっても醍醐味(だいごみ)はバラバラにしたマスを6面すべてそろえることだろう。
早ぞろえは「スピードキュービング」と呼ばれ、目隠しや片手など競技も多彩だ。トップレベルになると、わずか数秒で6面がそろってしまう。迫力に圧倒される。
日本は世界屈指のルービックキューブ好きの国とされる。ツクダオリジナル(現メガハウス)が80年に国内販売を始めた際は1年で400万個以上も売れた。これまでの累計販売数は実に1600万個を超えるという。
今でも人気は健在だ。それどころか、販売当初以来というブームの真っただ中にある。
新型コロナウイルス禍によるステイホームで再び手にする人が増えた。そろえ方を解説する動画がインターネットで簡単にみられるようになったことも大きいだろう。2023年度の販売数は92万個と初年度に次ぐ記録となった。
「私が幼いころに遊んだハンガリー生まれのおもちゃは、いまも歴史を刻んでいます」
こう声を弾ませるのは、在日ハンガリー大使館のセンドレイ・ティボル・チャバ臨時代理大使だ。
一方で、こんな悩みもあるという。「ハンガリー人であるルービック氏が発明したものだということを知らない人も多い」
今年はルービックキューブの誕生50周年、さらにルービック氏が80歳になった節目の年でもある。偉大な発明とハンガリーの関係をもっと知ってもらおうと、大使館は大規模な展示会を企画した。
メガハウスも協力し、3333個のルービックキューブを使ったモザイクアートなど趣向を凝らした。最新モデルも展示中だ。
時代を超えて愛され続けることが、立体パズルの王様とも言える存在感の証明だろう。展示会はリスト・ハンガリー文化センター東京で11月15日まで。(専門記者)