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毎日新聞2024/8/31 東京朝刊有料記事774文字
なるほドリ 「ドラッグロス」という言葉を聞くことが増えたよ。
記者 ドラッグロスとは、欧米で承認(しょうにん)されている薬が日本では開発されず、承認申請(しんせい)もされていない状況を指します。医薬品(いやくひん)は有効性や安全性などを確かめてから承認されますが、日本は欧米に比べて審査のスピードが遅いなどと言われています。厚生労働省の調査では2023年3月時点で承認が遅れている医薬品は143品目に上り、うち86品目は開発に未着手です。
Q 理由はさまざまあるのかな?
A 開発未着手の薬がどんなものか調べてみると、欧米のベンチャー企業が開発した医薬品のうち、希少(きしょう)な疾患(しっかん)や子ども向けのものは、使用する人が少なく、採算(さいさん)が取りづらいことが分かりました。日本の薬価(やっか)制度では、販売想定価格が欧米に比べて低くなりがちで、事業が成り立ちにくいとの指摘があります。承認を得るハードルも高く、資金に限りがあるベンチャーがわざわざ日本市場で開発・承認を進めるメリットがないのです。
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Q どうしたらいいの?
A 海外のベンチャー企業に目を向けてもらうとともに、国内の企業を育成する必要もあります。政府は7月、ドラッグロス解消に向けた工程表(こうていひょう)を公表しました。26年度までに必要性の高い薬の臨床試験(りんしょうしけん)(治験(ちけん))に着手し、28年までに企業価値100億円規模の創薬(そうやく)企業を10社以上誕生させることなどを盛り込みました。治験や承認に関わる要件を緩和し、国内外の企業が参入できる市場作りを進めるとしています。
Q 解決に進むのかな。
A 解決は簡単ではありません。開発や治験に関わる人材育成など、長期的に解決すべき課題も多く、息の長い取り組みが求められます。(くらし科学環境部)