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毎日新聞2025/2/13 21:15(最終更新 2/13 22:03)1175文字
住友電工ファインポリマーの本社=大阪府熊取町で2025年2月13日午後1時8分、本社ヘリから
住友電工ファインポリマーの本社=大阪府熊取町で2025年2月13日午後1時14分、本社ヘリから
熊取町が井戸水の飲用を控えるよう呼びかける住民向け文書=大阪府熊取町で2025年2月13日午後2時49分、長沼辰哉撮影
大阪府熊取町
熊取町が井戸水の飲用を控えるように呼びかける住民向けの文書=大阪府熊取町で2025年2月13日午後2時49分、長沼辰哉撮影
熊取町役場=大阪府熊取町で2025年2月13日午後2時11分、長沼辰哉撮影
大阪府と住友電気工業(大阪市)は13日、子会社の化学メーカー・住友電工ファインポリマー(大阪府熊取町)の敷地内で、井戸水から有機フッ素化合物(PFAS)が国の暫定目標値(水1リットル当たり50ナノグラム)の1460倍に当たる1リットル当たり7万3000ナノグラムを検出したと発表した。現時点で健康被害の訴えはない。府は今後、発生源や原因の特定を進め、汚染が広がらないよう対策を検討する。
同社の敷地内では、井戸5カ所のうち、現在は生産工程で使用していない3カ所で1リットル当たり5300~7万3000ナノグラムのPFASを検出した。生産工程で使っている2カ所では暫定目標値を下回った。同社は住友電工の子会社として1999年に設立され、フッ素化合物を使った樹脂製品を製造している。
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府は2024年12月、町内にある別の事業所で飲用に使っていた地下水から、PFASの代表的な物質であるPFOSとPFOAが合計で1リットル当たり667ナノグラム検出されたと発表した。その後、この地点から半径500メートル以内にある家庭用や事業所の井戸計10カ所と、河川3カ所を調査した。
住友電工ファインポリマーの敷地外にある井戸4カ所でも暫定目標値を超える結果が出た。府が改めて667ナノグラムを検出した事業所の水源を調べたところ、1リットル当たり1900ナノグラムを検出した。既に上水道に切り替えたという。
周辺の河川でも暫定目標値は下回ったものの、1リットル当たり23~36ナノグラムの数値が出た。住民の多くは汚染されていない上水道を利用しているが、府や町は周辺住民らに対し、地下水を飲まないよう呼びかけている。
住友電工は取材に対し「周辺の方々に心配をおかけし、不安を抱かせる結果になってしまった。(敷地内で検出されたPFASは)非常に高濃度だと認識しており、原因の究明を進め、必要な対策をとりたい」とコメントした。府の担当者は「このような数値が出たことには驚いている。調査を進めたい」と答えた。
近隣に住む会社員の女性(56)は「井戸水は飲まないし、健康被害はないと言われるが、原因を突き止めて、定期的に水質検査をしてほしい」と話した。
PFASは1万種類以上あるとされる有機フッ素化合物の総称。金属加工材や食品包装紙、泡消火剤などに含まれ、分解されにくいことから「永遠の化学物質」と呼ばれる。一部物質では発がん性が指摘されている。09年には国際的な規制の対象となり、政府は20年度に水道水の暫定目標値として、代表的な物質PFOSとPFOAの合計を水1リットル当たり50ナノグラムと決めた。環境省は暫定目標値を水道法に基づく「水質基準」に格上げし、水道事業者に定期的な検査などを義務付ける方針を決めている。【藤河匠、東久保逸夫、中村宰和、長沼辰哉、大坪菜々美】