|
毎日新聞2024/9/17 東京朝刊857文字
急進右派「ドイツのための選択肢(AfD)」に反対し、プラカードを掲げてデモ行進する市民=ドイツ東部テューリンゲン州の州都エアフルトで1日、ロイター
欧州で極右勢力の台頭が続く。第二次大戦後、ナチスとの決別を誓ったドイツにもその波が押し寄せている。
独東部テューリンゲンの州議会選で、急進右派「ドイツのための選択肢(AfD)」が3割超の票を得て第1党になった。急進右派が州議会最大勢力となるのは、戦後初めてだ。東部ザクセン州では第2党となった。今年1月に発足した左派ポピュリズム政党も、両州で躍進した。
Advertisement
2013年に結党されたAfDは当初、ユーロ圏離脱を唱えていたが、欧州難民危機があった15年以降は反移民・反イスラムの姿勢を前面に掲げる。ウクライナへの軍事支援反対などの主張は、左派ポピュリズム政党と重なる。
旧西独地域との経済格差が残る旧東独を中心に有権者に浸透し、23年には旧東独の市長選や町長選でもAfD候補が当選した。
ドイツはナチスを生んだ過去への反省から、民主主義体制を脅かす政党の活動を基本法(憲法)で禁じている。
ナチスのスローガンを演説で使ったAfD幹部は今年、2度の有罪判決を受けた。独社会には排外主義的な勢力への警戒心が強く、AfDの躍進に動揺が広がる。
ポピュリズム勢力台頭の背景には、インフレなどによる生活苦や景気低迷、移民・難民の増加に有効な対策を打ち出せていない政府への市民の不満がある。8月には西部ゾーリンゲンで、シリア人の男性による無差別殺傷事件が起き、社会不安が高まっていた。
特筆されるのは、戦後政治を主導してきた穏健な2大政党の不振だ。中道右派のキリスト教民主同盟はザクセン州で第1党を維持したものの、議席を減らした。ショルツ首相の中道左派・社会民主党は両州でポピュリズム政党の後じんを拝した。
ドイツは来年、連邦議会選を迎える。中道政党は、教会や労働組合など従来の支持層だけでなく、無党派層にも浸透する必要がある。さもなければ、ポピュリズム政党のさらなる伸長を招き、排外主義に拍車がかかりかねない。
ドイツはフランスと並び欧州連合(EU)の中核を成す。国内を安定させ、寛容や多様性といった価値観を守ることが求められる。