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毎日新聞2025/3/19 06:00(最終更新 3/19 06:00)有料記事1353文字
東京電力=東京都千代田区で、曽根田和久撮影
東京電力福島第1原発事故によって福島県内の除染で発生した大量の土を再利用するにはいくらかかるのか。ある環境省幹部は「土を運ぶだけで兆円単位になるだろう」とささやく。さらに県外で最終処分する費用まで含めると、どこまで膨らむのか未知数だ。
東京電力福島第1原発事故によって発生した除染土。行き場のない現状と課題を報告します。
連載「除染土のゆくえ」は全10回のシリーズです。
巨額の費用は誰が負担するのか。事故の当事者でありながら責任の取り方が見えない東電。ある東電幹部は言う。「そこは痛いところだ。だが、国も東電の倒産を避けたいと思っているだろう」
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福島第1原発事故の賠償や廃炉、除染などにかかる費用の総額は現時点で23・4兆円と想定されている。このうち、除染土を一時保管する中間貯蔵施設は2・2兆円となっている。
この2・2兆円は、原発事故後に成立した「放射性物質汚染対処特措法」にある「(放射性物質による環境汚染への対処は)東電の負担の下に実施される」「(東電は国から)費用の請求があったときは速やかに支払う」という規定に基づき、事業を所管する環境省が東電に請求することになっている。
除染作業をする作業員たち=福島県大熊町で2013年2月22日午後1時31分、西本勝撮影
東電は、原子力損害賠償・廃炉等支援機構を通して国から中間貯蔵施設の費用を含めた15・4兆円の交付国債を受け、立て替えてもらっている。この立て替え分の返金のうち、被災者らへの賠償費用などは東電が自力で捻出することになっているが、中間貯蔵施設の費用については、国のエネルギー対策特別会計(エネ特)から拠出される。
では、除染土の再利用や最終処分の費用負担はどのような仕組みになるのか。
環境省は中間貯蔵施設と同様に東電に請求するとしている。既に福島県飯舘村で行われている除染土を農地の造成に再利用する実証事業の費用の一部も東電に請求した上で、エネ特から拠出されたという。
だが、本格的な再利用についてはどう負担するのか明確ではない。復興庁幹部も「大変な状況にある東電に請求できるのか、軽々しく議論できない」と話す。
現在の仕組みでも東電は除染土の保管や処分に関する費用負担を事実上免れていると言える。一方、放射線量が高く原発に近い帰還困難区域の除染については、政治的な判断で東電に請求すらせず、国費を投じることになった前例もある。
被災者らへの賠償と廃炉費用で多額の借金を抱える上、経営再建の柱に据える柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働も見通せていない東電。仮に除染土の再利用などの費用も負担することになれば「東電が破綻してしまう」と危惧する声が政府関係者から漏れ聞こえる。
除染土などが保管されている中間貯蔵施設。奥に東京電力福島第1原発が見える=2025年2月15日午前11時27分、本社ヘリから
経済産業省のある幹部はきっぱりと言う。「東電が破綻することになれば、その負担は結果として税金で担うことになる。財源は(再利用の)事業費や東電の経営状況などを見ながら判断する必要があるだろう」
見えない東電の責任の形について、信州大の茅野恒秀准教授(環境社会学)はこう指摘する。「除染土が発生したのは、原発事故で広範囲に飛散した放射性物質による被ばくを抑えるために除染が必要だったからだ。責任の所在を考えれば、対応すべきは東電と監督責任のあった経産省。2者が汗をかかず、環境省が除染土に関する政策を推進していること自体がおかしい」【高田奈実、山口智】