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毎日新聞2024/10/15 東京夕刊有料記事449文字
すし店に並べられている生マグロ=静岡市清水区で2023年8月24日、小出禎樹撮影
山梨市の妻の実家を訪ねると、いつも食卓にマグロの刺し身が並んだ。「海なし県」の日常風景を長年、何となく不思議に思っていたが、隣県の静岡市に赴任して謎が解けた。
マグロの刺し身をふんだんに盛った丼=静岡県で、小出禎樹撮影
静岡市は冷凍マグロ水揚げ量日本一を誇る清水港がある。1世帯当たりのマグロへの年間支出額を調べてみた。総務省の家計調査によると、静岡市は2023年が1万254円で18年連続でトップ。山梨市に近接する甲府市は7832円と名古屋市や宇都宮市に次ぐ4位だったが、他は静岡市に肉薄する2位の年が多い。05年は甲府市(1万3667円)が静岡市(1万2387円)からトップの座を奪っている。
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冷凍マグロ水揚げ量日本一を誇る清水港=静岡市清水区で2022年10月11日、小出禎樹撮影
江戸時代に、馬を使って駿河湾のマグロを新鮮なまま甲府盆地に流通させられるルートが開かれ、食文化として定着。甲府市を中心とした消費都市が形成されたという。
清水港に水揚げされたマグロ=静岡市提供
市場で競りにかけられるマグロ=静岡市提供
山梨県はアワビを加工した「煮貝」が名物として知られ、人口当たりのすし店数が日本一とのデータもある。海の幸を巡り人々が甲州と駿河を行き交う。いにしえの姿を思い浮かべてみると何とも面白く興味深い。【小出禎樹】