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毎日新聞2024/10/31 東京朝刊842文字
宮城県の東北電力女川原発2号機(奥)=2024年10月24日午後0時25分、本社ヘリから
宮城県女川町、石巻市に立地する東北電力女川原発2号機が再稼働した。東日本大震災で被災し、損傷した原発では初めてだ。安全対策と避難体制の不断の点検が求められる。
震度6弱を記録し、敷地は約1メートル地盤沈下した。高台にあったため津波の直撃は受けなかった一方で、海水が地下の水路から流入し2号機の設備に被害が出た。ただ、東京電力福島第1原発のような過酷事故は免れた。
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東北電は耐震強化と津波対策を進め、2020年に原子力規制委員会の審査を通過した。その後、宮城県など地元自治体が再稼働に同意した。
東日本では原発は一基も運転していなかった。政府は電力不足の解消につながるとして、再稼働の動きを後押ししてきた。
だが、三陸沖では大地震が繰り返されてきた。自然災害と原発事故が重なる「複合災害」への備えを怠ってはならない。
北陸電力志賀原発が立地する能登半島では、今年1月に発生した地震による住宅の倒壊や道路の寸断が相次いだ。被ばくを避けるための避難や屋内退避が困難になることが浮き彫りになった。
東北電力女川原発の場所
女川原発は太平洋に突き出た半島部にある。リアス式海岸の急峻(きゅうしゅん)な地形で避難は難しい。わずかな平地に集落が点在するため、孤立しやすい。能登半島と状況が似ている。
規制委は能登半島地震を受け、屋内退避の在り方の検討を始めた。しかし中間報告では、家屋の耐震化や道路寸断時の対応について管轄外として踏み込まなかった。
能登半島は先月、豪雨にも見舞われた。災害リスクは高まっている。再稼働への理解を住民に求めるのであれば、各省庁が一体となって複合災害対策に取り組む姿勢が欠かせない。
12月には中国電力島根原発も再稼働する見通しだ。県庁所在地に唯一立地する原発であるにもかかわらず、多くの住民が安全に避難できる体制が整っていないとの指摘もある。
原発の安全対策は強化されたが、楽観は禁物である。東日本大震災の教訓を忘れずに、国民の命を守る手立てを講じるのが政府、自治体、電力事業者の役割だ。