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毎日新聞2025/10/12 18:33(最終更新 10/12 18:34)有料記事2311文字
PFASが高濃度で検出されるため水道水用の取水を止めている比謝川=沖縄県嘉手納町で2025年10月1日午後6時29分、比嘉洋撮影
沖縄県内の水道水源で検出されている有害な有機フッ素化合物(PFAS)の除去費用について、県の負担が増す恐れが出ている。県は2021年度から国の補助金を使ってPFASを除去する高機能活性炭を導入したが、26年度以降に必要になる活性炭の取り換え費用計約16億円は「施設の更新」にあたり、制度上、国の補助金が出ないためだ。沖縄では米軍基地がPFASの汚染源になっている可能性が高く、重い基地負担が、将来的に水道料金の値上がりを招く恐れがある。
那覇市など7市町村の約45万人に水道水を供給する沖縄県北谷(ちゃたん)町の北谷浄水場。取水源の一部となっている沖縄本島中部の河川や井戸群は基地に近く、PFASの一種であるPFOSとPFOAの合計が国の暫定目標値(1リットル当たり50ナノグラム)を上回る濃度で検出されている。
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公営企業として水道水供給事業を担う沖縄県企業局はPFAS濃度を下げて供給するために、21~23年度にPFASを吸着除去する高機能活性炭を導入した。導入にかかった事業費約15億円のうち3分の2にあたる約10億円は防衛省の民生安定助成事業を活用して補助を受け、残りを県が負担した。
活性炭は一定の年数がたつと効果が薄れるため、県企業局は26年度以降に順次取り換えていく予定。更新費用は約16億円と見込むが、防衛省の補助金は初期の施設整備費が対象で、更新には適用できない。県は防衛省と協議を重ねているが、全額負担しなければならなくなる恐れがある。
活性炭導入の他にも、県企業局はPFAS濃度が高い河川からの取水を制限する分、海水を淡水化する施設をフル稼働させており、その動力費なども含めPFAS対策費は既に最大で年間約10億円に上る。県企業局は市町村に供給する水道料金を24年10月から段階的に引き上げており、PFAS対策費もその要因の一つとなっている。
26年度以降の活性炭取り換え費については当面、約24億円ある修繕引当金を取り崩すなどして工面し、すぐには水道料金に反映させない方針だ。しかし、事業の財政を圧迫するのは確実で、将来的に料金の値上げにつながる可能性はある。
水道水のPFAS対策費の負担などを国に求めるオンライン署名活動を始めると発表する市民団体のメンバーら=那覇市で2025年9月16日午後4時8分、比嘉洋撮影
PFASによる環境汚染の解決を訴える米軍普天間飛行場(宜野湾市)周辺住民らでつくる市民団体「宜野湾ちゅら水会」は他の市民団体とともに、国に恒常的な費用負担などを求めるオンライン署名を集める活動を始めた。米軍基地からとみられる汚染が水道料金に影響することに、会の代表の町田直美さん(69)は「なんで被害者の住民が負担しないといけないのか。納得できない」と憤る。
玉城デニー知事は9月18日の県議会で「補助事業の制約があるのであれば、問題が解消されるまで国および米軍の責任で費用を負担すべきであると強く求めたい」と述べた。【比嘉洋】
PFAS、基地由来と確定できず
沖縄県は水道水源のPFAS汚染について「米軍基地が汚染源である蓋然(がいぜん)性が高い」として、国に対し、PFAS除去費用の負担を繰り返し求めてきた。しかし、米軍側が「基地が汚染源」と認めていないため、国の補助は一部にとどまる。汚染源の特定には基地内の状況把握が必要で、県は立ち入り調査を求めているが、日米地位協定に基づき基地の管理権を持つ米軍は明らかな漏出事故などのケースを除き、応じていないのが現状だ。
高濃度のPFASが検出されているのは、米軍嘉手納基地(嘉手納町など)周辺の河川や井戸、米軍普天間飛行場(宜野湾市)周辺の湧き水などで、県は地下水脈の調査結果などから基地が汚染源とみている。
しかし、国は「現時点で米軍との因果関係について確たることを申し上げることは困難」との立場だ。
水道水からPFASを除去するため、高機能活性炭を導入している沖縄県企業局の北谷浄水場=沖縄県北谷町で2025年10月1日午後6時46分、比嘉洋撮影
北谷浄水場での高機能活性炭の導入には、県の要望を受け、防衛省が補助金を支出した。ただし、前記の立場から、防衛省はあくまでPFAS対策ではなく、浄水が米軍基地にも供給されていることが補助適用の理由と説明する。
20年と21年には米軍基地からのPFAS漏出事故が起き、沖縄県は基地に立ち入り調査をした。日米両政府が15年に締結した地位協定の「環境補足協定」に基づき、米軍側も認めた。
立ち入り認めない米軍
一方、基地周辺での恒常的なPFAS検出については、県が16年以降、嘉手納など3カ所の基地への立ち入り調査を申請したが、米軍が認めていない。環境補足協定で「日本側が基地への立ち入りができる」と明記されているのは、有害物質の漏出事故が起きた場合と基地返還に関連する調査をする場合のみで、恒常的な汚染に対する調査は対象になっていないためだ。
環境省が全国の米軍基地の環境汚染を防止するため実施している「在日米軍施設・区域環境調査」でも14年度以降は基地内での調査が実施されなくなった。従来は調査を受託する沖縄県が基地に入って水質や大気の状況を調べてきた。だが、14年度から環境省は調査地点を基地周辺に変更した。環境省の担当者は取材に「環境影響を広く把握できるように調査方法を見直した結果だ」とするが、米軍の意向が影響している可能性がある。
専門家「防衛省が水道対策費の負担を」
地位協定に詳しい山本章子・琉球大准教授(安全保障論)は「環境補足協定の締結によって、自治体の立ち入り調査は漏出事故や基地の返還時のみに制限される運用になった」と指摘する。米軍は基地の機密保持のため、今後も立ち入りを拒み続けるとみられるとして「防衛省は状況証拠からPFAS汚染は基地由来と認め、水道の対策費を負担すべきだ。証拠固めに必要な環境調査は防衛費としても計上できるのではないか」と話す。【比嘉洋】