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毎日新聞2024/11/7 東京朝刊614文字
フロリダ・ウェストパームビーチでの集会に登場したトランプ前大統領(左)と副大統領候補のバンス氏=6日、AP
選挙戦最終盤に激戦州フィラデルフィアで演説するハリス副大統領=4日、AP
「西側の力を誇示するというより最後の晩餐(ばんさん)」と評されたのは6月にイタリアで開かれた主要7カ国(G7)首脳会議。終わりが見えない二つの戦争に物価高騰やポピュリズムの台頭。政権与党に逆風が吹いていた▲それから5カ月。スナク英保守党政権が総選挙に敗れ、岸田文雄前首相も退任。後を継いだ石破茂首相の自公連立政権も衆院選で過半数割れした。仏独やカナダでも重要選挙で与党が敗れている▲高齢批判で再選を断念したバイデン米大統領に代わったハリス副大統領も逆風から逃れられなかったようだ。初の女性大統領を目指したものの、カギとなる激戦州で復活を図るトランプ前大統領にリードを許した▲出口調査に経済が悪くなったと答えた有権者は半数弱。ロシアのウクライナ侵攻やイスラエルのガザ攻撃も現政権下で起きた。「インフレは史上最悪」「私なら戦争は起きなかった」というトランプ氏の主張がそれなりの説得力を持ったのかもしれない▲それにしてもトランプ氏への根強い支持は他国者には理解しがたい。前回選挙で負けを認めず、支持者が連邦議会襲撃事件を起こした時点では米国でも政治生命が終わったという見方が大勢を占めたそうだ▲キリストの復活にも使う「リザレクション」という単語で奇跡的な再起を表現するメディアもある。一部のキリスト教徒は「メシア(救世主)」と呼んでいるという。神がかったような指導者の再登場が何をもたらすか。世界が揺らいだ1期目を思えば不安が募る。