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毎日新聞2025/11/27 06:45(最終更新 11/27 06:45)1000文字
北川進さん(左)のノーベル化学賞受賞決定の記者会見の後、キュビタンを持って一緒に記念撮影する樋口雅一さん=京都市左京区で2025年10月8日午後9時2分、太田裕之撮影
2025年ノーベル化学賞を受賞する北川進・京都大特別教授が開発した、微小な無数の穴を持つ新素材「金属有機構造体(MOF)」。多孔性金属錯体とも呼ばれ、ジャングルジムのような構造で狙った気体を自在に出し入れできる特徴があり、世界で実用化が進められている。北川さんと共に研究し、スタートアップ企業「Atomis(アトミス)」(神戸市)を創業した樋口雅一・京都大高等研究院物質―細胞統合システム拠点(アイセムス)特定拠点准教授がこのほど、近年の状況を報道向けに解説した。
樋口さんによると、世界では少なくとも51社のスタートアップが創業され、国内では京大発のアトミスの他、名古屋大発の「SyncMOF(シンクモフ)」、東京科学大発の「TEKMOF(テクモフ)」が知られる。
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実用化のポイントは耐久性の確認と大量生産だ。大量生産ではアトミス、米国の「Numat」、欧州の「Promethean Particles」の3社が世界をリードしているという。
MOFは工業的な利用が多いが、一般に知られる活用例としては、英国発の「青果鮮度維持材料」が果物の鮮度を9カ月も保つ輸送を可能とした。他に米国発の「半導体ドーパントガスボンベ」、日本発としてアトミスも関わった日本フッソ工業の「フッ素樹脂コーティング反応槽」を挙げた。アトミスではメタンガスを安全に低圧で輸送できる小型タンク「キュビタン」を開発し、インドネシアでの実証実験を進めている。
MOFの実用化の状況について解説する樋口雅一・京都大高等研究院物質-細胞統合システム拠点(アイセムス)特定拠点准教授=京都市左京区で2025年9月8日午後4時37分、太田裕之撮影
樋口さんはMOFの大量合成の難易度に関わる4要素として、▽原料を溶かして合成するのに必要な溶媒の種類・量(水・少量が最適)▽反応条件(室温、常圧が最良)▽合成時の反応槽の腐食性(反応後に溶液が強酸や強塩基になるものは不向き)▽合成するMOFの空気中での安定性(水分と反応してしまうのは量産に不向き)――を挙げた。近年は溶媒をできるだけ使わないことで環境負荷やコストを減らせる合成方法が目指されるようになり、アトミスでも開発し、特許を取得しているという。
同席した北川さんは「貯蔵はかなり重要な局面にあり、メタンを着実に貯蔵できる。後は分離で、空気中の二酸化炭素を、エネルギーをあまり使わず回収できれば非常に大きな効果が出てくる。最後は分離・回収したものを(役立つ何かに)変換していく。この貯蔵、分離、変換ができる材料として世に出ていってもらいたい」と話した。【太田裕之】