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毎日新聞2025/12/22 21:16(最終更新 12/22 22:23)有料記事1495文字
種子島宇宙センターから発射されたH3ロケット8号機が残した白煙=鹿児島県南種子町で2025年12月22日午前10時53分、本社ヘリから上入来尚撮影
日本の宇宙輸送を担うH3ロケットの8号機は22日、準天頂衛星「みちびき5号機」を所定の軌道に入れることができず、打ち上げ失敗となった。日本の基幹ロケットでは小型のイプシロンロケットも開発が停滞しており、一時的に日本が宇宙にモノを運べなくなる緊急事態に陥った。
「初号機に続いて、国の大事な衛星を届けられなかった。大変残念で申し訳ない。ロケットの使命を果たせなかったのは間違いない」。失敗を受けて記者会見した宇宙航空研究開発機構(JAXA)の有田誠プロジェクトマネジャーは沈痛な面持ちで語った。
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JAXAによると、2段目のエンジンが1回目の燃焼を始めるまでは、ほぼ想定通りの時間で進んだ。しかしその燃焼停止は27秒遅れた。さらに打ち上げから約25分後に始まった2回目の燃焼は、4分あまり続くはずが、点火した直後に停止した。
近年の日本の基幹ロケット開発をめぐる出来事
第2段の水素タンクの圧力が低下しており、エンジンの作動に影響を与えたとみられる。それによって推力も落ちていた。打ち上げ前に異常は確認されなかったが、飛行中に水素が漏れた可能性もあるという。水素タンクの圧力低下は、打ち上げ後3分20秒過ぎの第1段エンジン燃焼中に起きていた。
ロケットとは通信が取れておらず、衛星が分離できたのか、喪失したのかも分かっていない。JAXAによるとロケットの一部が燃え尽きず地上に落下する可能性があるが、人や建物に危害が及ぶ確率は極めて小さいとしている。
H3ロケットは、全50機中1回しか失敗しなかったH2Aロケットの後継機だ。1回当たりの発射費用は非公表だが、H2Aの約100億円から最終的に50億円程度まで大幅に削減し、海外衛星の受注や高頻度の打ち上げを目指していた。
しかし2023年には初号機の打ち上げに失敗。出だしからつまずき、やっと軌道に乗り始めたころだった。
政府の重要な衛星や探査機を打ち上げる役割を担うことから、2回目の失敗が与える影響は大きい。26年2月には「みちびき7号機」を、26年度中には火星衛星探査機「MMX」を打ち上げる予定だった。有田プロマネは「原因究明がなされずに次の打ち上げをすることはあり得ない」としており、遅れが生じる可能性がある。
東京理科大の小笠原宏教授は「圧力の調整は電気系統からソフトウエアまで多様なシステムとなっており、原因の可能性はいくらでも挙げられる。また原因を解明しても、再現実験や対策が正しくできているかの検証が必要となる。過去には1年以上を要した例もあり、(打ち上げ再開まで)長期化する可能性がある」と指摘する。
また、H3と並んで基幹ロケットとして位置付けられるイプシロンも、22年に6号機の打ち上げに失敗して以降、エンジンの燃焼試験中に爆発事故が相次ぐなどし、再打ち上げのめどが立っていない。H2Aはすでに引退してしまっている。
JAXA名誉教授の的川泰宣さんは「民間もまだ衛星を打ち上げられる企業は無く、日本には衛星を打ち上げるロケットが一つも無いことになる。徹底的に原因を究明し、早く立ち直ってほしい」と話した。
海外からの衛星打ち上げを受注し、商業ベースに乗せるもくろみも不透明さが増している。
宇宙開発に詳しい澤岡昭・大同大名誉学長は「お粗末な失敗だ。考えられないトラブルが起きた。日本の技術力が低下しているのを感じる。今は日本が円安で海外の顧客を獲得するチャンスだったが、日本のロケットに対する信用度が低下し、客が離れてしまうことになる」と危機感を語る。【菅沼舞、信田真由美、木許はるみ】