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毎日新聞2026/5/10 10:00(最終更新 5/10 13:26)有料記事1564文字
=ゲッティ
体重はいつ、どのくらい増えると、その人の将来の死亡リスクを大きく左右するのだろうか――。
そんな疑問に対し、スウェーデン・ルンド大などのチームが最近発表した研究が一つの答えを出した。
肥満になると死亡リスクが実に7割も増えるという、気になるそのタイミングとは?
男女ともに年間で平均420グラム増
肥満は、世界中で8人に1人が直面する健康課題だ。早期死亡の主要なリスク要因として広く知られている。
しかし、人生のどの時期に体重が増え、いつ肥満を発症したかが将来の死因にどう影響するのか、これまで十分なデータがなかった。
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そこでチームは、スウェーデンの疫学研究を活用することにした。
1963~2015年に集められた、17~60歳の間に少なくとも3回の体重測定を受けた男性約26万人、女性約36万人を対象とし、特殊な統計手法を使って体重の増え方のパターンや肥満を発症する年齢を推定した。
その後、20年12月まで追跡して、全死亡や心血管疾患、がん、糖尿病など特定の死因との関連を分析した。
すると、男女ともに17~60歳の間で、年間平均420グラムのペースで体重が増えていた。
特に驚くべきは、30歳未満で肥満(体格指数「BMI」30以上)を発症した人は、60歳まで一度も肥満にならなかった人と比べ、死亡リスクが男性で約1・69倍、女性で約1・71倍高かったことだ。
肥満が健康を害していく様子を表す「メタボリックドミノ」のオブジェなどが展示されたイベント=秋田市で2025年11月2日午後、高橋宗男撮影
それだけでない。17~29歳の間の体重増加は、全死亡だけでなく、男性では調査した23の死因のうち13、女性では調査した19の死因のうち12とそれぞれ関連していた。影響を受けた死因には、心血管疾患、がん、2型糖尿病、消化器疾患、泌尿生殖器疾患などが含まれていた。
若くして肥満になると…
中高年以降(45~60歳)の体重増加は、若年期に比べると死亡との関連は弱かった。ただし、女性のがんによる死亡については例外だ。どの年齢層での体重増加も一貫して死亡リスクの上昇につながっていた。
「肥満である期間の長さが鍵となる要因だ」――。若年期からの肥満が特に危険な理由として、チームはこう指摘した。
若くして肥満になると、それだけ長い期間、体内でインスリン抵抗性や慢性的な炎症、脂肪組織から分泌される有害な細胞(アディポサイトカイン)にさらされることになり、血管や臓器にダメージを蓄積させるからだ。
また、女性では閉経前後(45~60歳)の体重増加ががんのリスクを高める要因として、脂肪組織がエストロゲン(女性ホルモン)の主要な供給源となり、乳がんや生殖器系のがんを誘発する可能性もあると示唆した。
人種を問わず影響、日本人でも
肥満は遺伝や成育、社会的背景など、さまざまな要因が考えられる。写真はイメージ=ゲッティ
この研究結果を日本の専門家はどう見るか。
肥満に詳しい長谷川一宏・徳島大病院准教授(腎臓内科)は「体重の増え方には個人差があり、その違いが健康にどう影響するかを、これほど大規模に検証した研究は多くない。若年期の体重増加が健康の『将来予測因子』として非常に強いことを示した点でも意義が大きい」と評価する。
海外では一般にBMIが30以上を「肥満」と定義している。一方、日本人は25以上だ。欧米人に比べ、たとえBMIが低くても内臓脂肪型の肥満になりやすく、糖尿病や高血圧など生活習慣病につながりやすいからだ。
長谷川さんは「(今回の結果を)日本人に置き換えた場合、BMI25前後からリスクが上昇する可能性がある」と指摘する。
そのうえで「研究の主眼は『体重がいつ増えたか』であり、この点は人種を問わず共通して重要。日本人でも若年期の体重増加が長期的な健康に影響すると受け止めるべきだ」と注意を促した。
研究論文は4月10日、英医学誌ランセットが発行するオープンアクセス臨床誌「eClinicalMedicine」に掲載された。【河内敏康】