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毎日新聞2026/5/17 08:15(最終更新 5/17 08:15)有料記事1370文字
希少糖研究の最前線が報告された香川大学の市民公開シンポジウム=高松市で2026年4月28日午後3時、佐々木雅彦撮影
カロリーゼロの甘味料「希少糖」が抗がん剤やコンクリートの劣化防止剤、雑草の生育を止める抑草剤として利用できるかもしれない。希少糖研究で世界をリードする香川大(高松市)が同市で市民公開シンポジウムを開き、食品だけでなく医学、農業、工業の各分野での広がりと、意外な活用方法の可能性を報告した。
大量生産可能に
一般的な砂糖の主成分「ショ糖」は、ブドウ糖と果糖という二つの「単糖」(糖の最小単位)が結合してできている。自然界にある単糖では、この二つを含む7種類が99・9%を占める。残り0・1%程度には53種類の単糖が確認されており、これらを総称して希少糖と呼ぶ。
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希少糖研究は同大の何森(いずもり)健名誉教授が1984年に本格的に始めた。2000年には希少糖の一つ「D―アルロース」の大量生産方法を確立したことで、研究が産官学の連携体制に発展。松谷化学工業(兵庫県伊丹市)とタッグを組み、アルロースの大量生産・販売を実現させた。
16年には学内に国際希少糖研究教育機構を設立。学部の枠を越えた教授約80人がさまざまな地元企業と連携して研究を進めている。
希少糖「D-アルロース」=香川大学提供
市民公開シンポジウムは機構設立10周年を記念して開かれた。アルロースには食品分野でカロリーゼロ以外の特性もあると説明したのは農学部の小川雅広教授。例えば、白玉団子の原料の砂糖をアルロースに置き換えると、より軟らかくなりベタベタしなくなった。5日間保存しても硬くならず軟らかいままだったという。
医学部の村尾孝児教授は、糖尿病の引き金となる食後血糖値を抑える可能性を指摘した。糖尿病患者にアルロースを含む糖尿病食を食べてもらう臨床試験をしたところ、通常の糖尿病食と比べても食後の血糖値上昇を抑える効果が立証された。
甘味だけじゃない
甘味料以外の使い道を探る研究も盛んだ。同じ医学部の西山成教授は抗がん剤としての可能性を紹介した。希少糖の一つ「D―アロース」を実験用動物に投与すると、がんの増殖を止めるデータが確認できたといい、「がん細胞がカロリーゼロの希少糖をいくら食べてもエネルギーを作れないため、弱っていくのではないか」と推測する。これから臨床試験に入る段階だ。
植物にはどんな作用を及ぼすのか。同機構の秋光和也機構長によると、アルロースを加えると耐病性が増した。さらに、アルロースを入れる間だけ成長が抑えられ、加えるのをやめると成長が回復することも判明。秋光機構長は「例えば芝生にスプリンクラーで希少糖をまけば、芝刈りの労力が不要になる上、病気に強くなる効果が期待できる」と話す。農薬メーカーと開発を進めている。
地盤改良にセメントを使うと発生する発がん性物質「六価クロム」について、創造工学部の岡崎慎一郎教授は「実験では、アルロースを加えると無害化できる結果が得られている」とし、実用化を検討する段階に入っているという。また、鉄筋コンクリートの経年劣化に関しても「希少糖を加えると鉄筋を腐食させない効果がある」と説明した。
秋光機構長は「まだ思いつかないような産業分野で、希少糖が新しい原材料になりうる」と語り、県内企業などに共同研究を呼びかけた。問い合わせは同機構(087・832・1341、kenkyuraresugar-h@kagawa-u.ac.jp)。【佐々木雅彦】