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毎日新聞2026/5/18 06:00(最終更新 5/18 06:00)有料記事1887文字
廃炉中の高速増殖原型炉もんじゅ=福井県敦賀市白木で2021年10月6日、大島秀利撮影
廃炉作業中の高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の使用済み核燃料が、受け入れの有力候補だったフランスの施設の建設計画白紙によって、先行きが不透明になっている。もんじゅの燃料は特殊で、通常の再処理施設では対応できないためだという。
もんじゅは1995年12月、冷却材のナトリウムが漏れ、火災を起こした。2010年に再稼働したが、炉内に燃料交換装置が落下。大量の機器の点検漏れなどの不祥事も相次ぎ、政府は16年に廃炉を決定した。
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もんじゅを巡る主な経緯と今後の予定
廃炉計画によると、465体ある使用済み核燃料を34~37年度に搬出し、47年度に廃炉を完了するとしている。
六ケ所では対応できず
政府の政策では、原発の使用済み核燃料は必ず再処理して、プルトニウムを分離して再利用する方針だ。国内では、26年度の完成を目指して六ケ所再処理工場(青森県)が建設中だが、対応できるのは既存原発の使用済みウラン燃料で、もんじゅなどで燃やすウラン・プルトニウム混合酸化物燃料(MOX燃料)を再処理できる設計になっていない。
ラアーグ再処理工場=仏北西部ラアーグで2022年11月15日、宮川裕章撮影
そのため、文部科学省は20年代の運転を予定していたフランスの特殊燃料処理施設(TCP)の建設計画を注視していた。だが、資金の確保や既存のラアーグ再処理工場との接続が困難となり、TCP建設が断念されたことが判明した。
認定NPO法人原子力資料情報室の松久保肇事務局長は「再処理先はフランスしか考えられない。搬出先のあてがなくなるので、もんじゅ敷地での保管が続き、廃炉作業にも影響が出ると思われる」と指摘する。
高速炉サイクル
そもそも、もんじゅの使用済み核燃料はなぜ容易に再処理できないのか。
高濃度プルトニウム、臨界事故の危険性
理由の一つは、使用済み核燃料のうち282体を占めるMOX燃料に含まれるプルトニウムにある。既存の原発でMOX燃料を用いるプルサーマル発電では、核分裂性のプルトニウム濃度が6~7%の燃料を用いるが、もんじゅは15~21%と高濃度だからだ。
模擬燃料を入れたもんじゅの炉心。プルトニウムを入れた燃料集合体198体が入る=福井県敦賀市で1994年3月、旧動燃(日本原子力研究開発機構)提供
こうした高濃度の核物質が溶解の際に集まると、核分裂が連鎖的に生じ、「臨界事故」が起こる危険性が高まる。国内では、茨城県東海村の核燃料加工施設で99年に臨界事故が起き、作業員2人が大量の中性子線を被ばくして死亡した。
プルトニウム濃度が比較的低いプルサーマル発電のMOX燃料でも、再処理の際に臨界が起きないように濃度を薄めて少量ずつ処理する必要がある。ましてや、もんじゅのプルトニウム濃度はその数倍にあたり、再処理は難しくなり、高い技術が求められることになる。
六角形のステンレス容器(左)にプルトニウムの燃料棒が収まっているもんじゅの燃料集合体=旧動燃(日本原子力研究開発機構)のパンフレットから
使用済み核燃料を溶かすことも困難だ。燃料に含まれるプルトニウムが燃焼すると、その酸化物が生まれやすいとされる。他にも溶解しにくい物質が多く含まれているため、再処理のハードルは上がる。
また燃料集合体は、ステンレス製で硬い「ラッパ管」に覆われるなど複雑な構造をしている。解体、切断して溶解するためには、特殊な設備が必要とされる。
TCP計画の放棄について福井県原子力安全対策課は「もんじゅも含めすべての原発の使用済み核燃料は県外に持ち出してもらう方針に変わりない」とした上で、「国は搬出先をしっかり検討して、廃炉計画に沿って実行してほしい」と話している。【大島秀利】
鈴木達治郎・長崎大客員教授
鈴木達治郎・長崎大客員教授=東京都内で2025年7月27日午後4時56分、千葉紀和撮影
もんじゅの使用済み核燃料を再処理できたとしても、分離した約2トンものプルトニウムの使い道が問題だ。プルトニウムは8キロで核兵器1発分とみなされる核物質であり、日本は既に44・4トンを保有する。核拡散や盗難のリスクの観点から、政府は「保有量を減少させる」方針だが、消費は容易ではない。
米国や英国では、プルトニウムは燃料として極めて高コストで危険なものとみなしている。両国は分離済みのプルトニウムを別の物質と混ぜ、再び分離を困難にしてごみとして地中処分する方針を打ち出している。
日本も必要のない再処理はやめた方がよい。なぜなら、使用済み核燃料の中のプルトニウムは「死の灰」など猛烈な放射能を帯びた放射性物質と混在しているからだ。このままなら、核武装を図る国家やテロリストに盗まれても容易に利用できず、「核拡散に抵抗性」がある。大規模な化学工場で複雑な工程を経なければ、プルトニウムを分離できない。
既に多くの国が、使用済み核燃料は地中に直接処分する道を選んでいる。
日本では、使用済み核燃料は全量再処理の政策があるため、核のごみとして直接処分できない法制度となっている。これを改正して、直接、最終処分できるようにするのが一番だ。それが無理というなら、長期貯蔵場所を探す必要がある。