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毎日新聞2026/5/31 13:00(最終更新 5/31 13:00)有料記事1491文字
写真はイメージ=ゲッティ
妊娠中の母親の血液に特定の脂質が検出されない場合、子どものぜんそく発症リスクが約60%高い傾向がみられたとする研究結果を、デンマーク・コペンハーゲン大のチームがまとめた。ぜんそくの「個別化医療」を実現するための指標となる可能性がある。
特定の脂質「12―HETE」があると…
特定の脂質は炎症に関わる「12―HETE」。ぜんそくに関連し、悪化に関与すると考えられてきたが、逆にこれが作れないマウスは肺の免疫が未熟なまま育ち、大人になってから感染症が悪化しやすくなると2022年に報告されていた。
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チームは、デンマークと米国で計約1500人を一定期間追跡した研究を分析した。デンマークの研究によると、妊娠中の母親から12―HETEが検出されなかった場合、検出された場合と比べ、子どもが10歳までにぜんそくを発症するリスクが約60%高い傾向がみられた。
ぜんそくの人の割合
米国の研究と統合すると、母親から検出されなかった子どもは、3歳時点で気管や気管支がゼーゼーと鳴る「喘鳴(ぜんめい)」を発症するリスクが約40%高い傾向がみられた。
3歳までにぜんそくのような症状が出る回数も、検出されなかった母親の子どもで多く、風邪を引く回数も多いことと関連していた。
また、12―HETEが検出されなかった母親から生まれた生後1カ月時点の子どもでは、気道にぜんそくリスクと関連する特定の細菌が定着しやすく、ぜんそくになりやすい状態だった。
さらに解析すると、母親の12―HETEが検出されない状態が10歳までのぜんそくリスクに及ぼす影響のうち、約7%は生後1カ月時点での気道免疫の乱れが関与していることが示された。
サプリで効果?
一方、妊娠中の母親に対し、抗炎症効果が期待されるオメガ3系長鎖多価不飽和脂肪酸を含むサプリメント(オメガ3サプリ)と偽薬を飲むグループに無作為に分け、子どものぜんそく予防とどう関係するかを分析した。
写真はイメージ=ゲッティ
その結果、12―HETEが検出された母親の場合、オメガ3サプリを妊娠中に飲むと、子どものぜんそくリスクが58%有意に減少。12―HETEが検出されなかった母親では、オメガ3サプリを飲んでも予防効果は見られなかった。
呼吸器感染症に対するオメガ3サプリの効果も調べると、12―HETEが検出された母親では、オメガ3サプリを飲むことで子どもの3歳までの肺炎や「クループ症候群」の発症リスクが低下。検出されなかった母親の子どもでは関連がみられなかった。
チームは「妊娠中に12―HETEの値をチェックし、必要に応じた介入法が確立されれば、子どものぜんそくや感染症を減らすための今後の予防戦略につながる可能性がある」としている。
成果は、3月17日付米科学誌「セル・リポーツ・メディシン」に掲載された。【河内敏康】
国立成育医療研究センターの山本貴和子医師(疫学・アレルギー学)の話
妊娠中の母体環境が子どもの将来のぜんそくリスクに影響することを示した重要な成果だ。
胎児期から乳児期にかけての環境がアレルギー発症に影響することは知られていたが、背景にある生体分子とメカニズムの一端を示した点で意義が大きい。12―HETEの状態によって、妊娠中の魚油(オメガ3脂肪酸)摂取による予防効果が異なる可能性が示された点も重要だ。
今後、母体の状態やリスクに応じて最適な予防法を選ぶ「個別化予防」が重要になってくるが、その方向性を示す一つの重要なステップと言える。
ただ現時点で、この指標だけで子どもの将来のぜんそく発症を正確に予測できる段階ではなく、今後さらに研究を重ねていく必要がある。