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毎日新聞2024/12/17 東京夕刊有料記事925文字
プロジェクト「#言葉の逆風」のポスターと、その上に貼られた数々の「追い風言葉」=東京大学本郷キャンパスで2024年12月4日、小国綾子撮影
何気ない一言も、浴び続ければ逆風だ――。4日、東京大学の男女共同参画イベント「#言葉の逆風を考える」に参加した。副学長の林香里さんと「虎に翼」の脚本家、吉田恵里香さんの対談。学生や研究者の男女比の不均衡を是正するプロジェクト「#言葉の逆風」の一環で、冒頭の言葉はプロジェクトのキャッチコピーだ。
なぜ東大に女性が少ないのか。会場には3種類のポスターが。女性の学生や研究者の写真に「(女の子なんだから)地元の大学でいいんじゃない?」「学歴つけても結婚できないよ」など、ジェンダーバイアスだらけの言葉が大量に書き込まれている。これらはすべて、東大の女性たちが実際に言われた言葉。女性の進路やキャリアを妨害する一言を「#言葉の逆風」と名付け、可視化するのが狙いだ。
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イベント会場の受付で「あなたの背中を押してくれた“追い風言葉”を書いてポスターに貼ってください」と小さな白いシールを手渡された。私は早速、ポスター上の“逆風言葉”を読んでみた。
「数学できる女は女じゃない」。胸がずきっとした。高校生の時言われたっけ。「男社会だけど大丈夫?」。これは就職面接でよく質問された。「女性ならではの感性を」。ああ、もう聞き飽きた!
プロジェクト「#言葉の逆風」のポスターに貼られた「追い風言葉」のシールを読むイベント参加者ら=東京大学本郷キャンパスで2024年12月4日、小国綾子撮影
読み進むうち、過去に投げつけられた“逆風言葉”が次から次へと思い出され、つらくなった。逆風なんかに負けない、力強い“追い風言葉”を書くぞ、と意気込んでいたはずなのに……。結局、何も思いつかぬまま、イベント後、改めてポスターの前に立ってみた。そしたら驚いた! いつの間にか、ポスターはシールでいっぱい。参加者たちのつづった60以上の“追い風言葉”が“逆風言葉”の上にベタベタと貼られていたのだ。
「ジェンダー問題が過渡期のこの時代に生まれてきたのは、それを変えていくためじゃない?」は胸にぐっときた。そうだ、元気ださなきゃ。「(人づてに聞いた息子の言葉)母の仕事を尊敬している」には鼻の奥がツンとした。みんなの“追い風言葉”にエンパワーメントされ、私も思い出した。子育て中の仲間との合言葉は「育児も仕事も70%でOK。足したら140%!」だったっけ。
だから私もオレンジ色のペンで書いた。<私は私。あきらめない>(オピニオン編集部)