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毎日新聞2026/9/10 19:28(最終更新 9/10 19:28)有料記事1068文字
中国の習近平氏(左)と米国のトランプ氏(右)
中国の人工知能(AI)の急速な発展が、米中の新たな火種になっている。問題となっているのが「蒸留」。新たなAIに、既存の高性能AIを学習させる訓練方法のことだ。
トランプ米政権は「中国企業が不正に蒸留をした」と非難し、中国政府は「米国の封じ込め政策だ」と反発する。
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米中首脳会談が今月下旬に迫る中、何が起きているのか。
「中国を拠点とするAI企業は、産業規模で悪意のある『蒸留』活動を行っている」
米国家安全保障局などは8日に声明を発表し、中国のAI企業の活動を警告した。ディープシーク(深度求索)や月之暗面(ムーンショットAI)など6社を名指しして、米国企業に対応を促した。
米が問題視し始めたきっかけ
ここで問題視されている蒸留とは、どのような技術なのか。
既存の高性能AIが出力したデータを学習させることで、新たなAIを訓練させる手法を指す。これまでも学術研究などの分野では一般的に、この手法が使われていた。
米国が問題視し始めたきっかけは、近年の中国製AIの急速な成長だ。AI技術で独走してきた米国だが、2025年のディープシークの新モデル登場以降は中国勢の猛追を受けている。
米国内では「中国企業が蒸留により低コストで高性能のAIを開発している」として、非難の声が高まりつつあった。
決定的だったのは、今年7月に中国の新興企業「ムーンショットAI」が発表した新モデル「Kimi K3」が、性能面で米国勢に肉薄したことだ。
中国側は真っ向から反発
米国での危機感の高まりも背景に、米政府高官がムーンショットAIによる米アンソロピックへの蒸留疑惑を公言するなど、反発の声が強まった。こうした状況を受け、米国家安全保障局などの8日の声明につながった。
中国側は真っ向から反発する。
商務省は、今月9日に報道官談話を発表。「米国の非難は事実無根で、法的根拠もない。蒸留は米国を含む各企業が用いる一般的な手法だ」と指摘した。
さらに「米国のやり方は取り締まりを口実に産業を独占する典型的な例だ」と批判する。中国企業が不利益を被れば「断固として対抗措置をとる」と強調した。
一方、「米中がリスクを管理して、AI産業の世界的な利益を促進することを望む」(商務省)と、お互いの歩み寄りも促した。
今月下旬には、ワシントンでトランプ大統領と習近平国家主席の首脳会談が予定されており、AIは主要なテーマの一つとなる。お互い妥協はできないが、関係悪化につながる決定的な対立は避けたいこともあり、今後の駆け引きが活発化しそうだ。【北京・松倉佑輔】