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毎日新聞2026/10/5 21:29(最終更新 10/5 21:29)有料記事1129文字
2026年のノーベル生理学・医学賞に決まった3氏
スウェーデンのカロリンスカ研究所は5日、2026年のノーベル生理学・医学賞を、米スタンフォード大のカール・ダイセロス教授(54)、独フンボルト大のペーター・ヘーゲマン教授(71)、独ビュルツブルク大のゲオルク・ナーゲル教授(73)の3人に授与すると発表した。光に反応するたんぱく質を神経細胞に作らせ、光を当てることでその細胞の働きを制御する「光遺伝学」を確立したことが評価された。
生きた脳に光を当てて神経細胞の働き操作
人間の脳には多数の神経細胞があり、どの細胞の働きがどのように記憶や感情、行動に関連しているのか確認するのが難しかった。光遺伝学は生きた脳に光を当て、狙った特定の神経細胞の働きを操作することを可能にし、神経科学を飛躍的に発展させた。
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独フンボルト大のペーター・ヘーゲマン教授=米芸術科学アカデミーのホームページより
ヘーゲマン氏とナーゲル氏は00年代初頭、単細胞藻類から光に反応するたんぱく質「チャネルロドプシン」を発見した。このたんぱく質に青色の光が当たるとイオンを細胞内外に輸送し、その結果、電気信号が流れる。
神経細胞は電気信号で活動しているため、チャネルロドプシンを組み込めば、光によって神経細胞のオン・オフを制御できることが分かった。
ダイセロス氏は、実際にチャネルロドプシン遺伝子をラットの神経細胞に導入。青色光を照射し、神経信号を人工的に発生させることに成功し、05年に研究成果を発表した。さらに2年後には、この「光で神経細胞をオン・オフできるスイッチ」を、生きたマウスの脳内で機能させることに成功した。
独ビュルツブルク大のゲオルク・ナーゲル教授=同大学のホームページから
精神疾患、神経疾患研究にも使用
授賞理由は「光制御イオンチャンネルと光遺伝学に関する発見」。ノーベル生理学・医学賞委員会の委員長を務めるペール・スベニングソン氏は「かつては夢でしかなかった方法で、脳の地図を描くことを可能にした」と功績をたたえた。
光遺伝学は今では神経科学に欠かせない手法で、うつ病やパーキンソン病など精神疾患や神経疾患の研究にも使われている。
慶応大などは光遺伝学の技術を使い、目の難病「網膜色素変性症」で失われた視覚を再生する遺伝子治療薬の臨床試験(治験)を始めている。
同大の栗原俊英准教授(眼科学)は「これまで治療法がないとされていた病気だ。3人の研究成果は基礎研究だけでなく、こうした患者に投与する臨床にまで至っていて、今回の受賞は分野の研究者、医師としてうれしく思う」と授賞を喜んだ。
米スタンフォード大のカール・ダイセロス教授=東京都千代田区で2023年4月14日、吉田航太撮影
09年からダイセロス氏と共同研究する加藤英明・東京大教授(構造生物学)は「(ダイセロス氏は)物腰柔らかく、研究チームのやる気を引き出すのがとても上手。そんな姿勢も受賞につながったと思う」とたたえた。
授賞式は12月10日、ストックホルムで開かれる。【菅沼舞、信田真由美、荒木涼子】