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毎日新聞2025/1/30 東京朝刊有料記事1014文字
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不法移民の本国への強制送還を目指すトランプ米大統領。コロンビアには受け入れなければ25%の高関税をかけると脅した=2025年1月27日、AP
南米のコロンビアが26日、不法移民の強制送還を目指す米軍機の着陸を拒否した。トランプ米大統領は、それを理由に25%の関税を課すと宣言、困ったコロンビアは、一転して着陸許可を出した。トランプ流が早くも成功を収めた。
トランプ政権は、犯罪者や麻薬の流入が続いているとして、米国と南北で国境を接するメキシコとカナダに、2月1日からそれぞれ25%の高関税を課すと脅す。
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関税を「美しい言葉」と言うトランプ氏の辞書には、おそらく「お行儀が悪い」という言葉はないのだろう。
国連総会で演説するコロンビアのペトロ大統領。米国からの強制送還をいったんは拒否する姿勢を示したが、トランプ米大統領が25%の高関税を課すと脅したことを受けて撤回し、強制送還を受け入れた=2024年9月、ロイター
「米国はいつからバナナ・リパブリックになったのか」。ロシアのプーチン大統領は8年ほど前の米大統領選中、ロシアが米選挙戦に「介入して妨害している」との批判を受けて、こう反論した。
プーチン氏が口にした「バナリパ」は、カジュアル衣料ブランドのことではない。カリブ海に浮かぶ小国などを示す言葉だ。
「米国は先進国。ロシアが米国有権者の選択を左右していると真面目に受け止めている米国人など居ないはずだ」と、プーチン氏は説き、「大国らしく、堂々と振る舞うべきだ」と諭した。
コロンビアの首都ボゴタにある米大使館で、米国ビザ取得のため列を成す人々=2025年1月27日、AP
中国外交トップの王毅・共産党政治局員兼外相も、今月24日の電話協議で、米国のルビオ新国務長官に「大国は大国らしい振る舞いを」と注文をつけた。トランプ政権が掲げる「米国第一主義」の批判と言える。
ただ、コロンビアがわずか9時間でトランプ政権の圧力に屈服した現実もある。味をしめたトランプ氏は、カナダなどへの高関税発動に踏み切る可能性が高い。
政権発足直後から、思わず顔をしかめたくなるような政策ばかりを打ち出すトランプ氏。日本人は意外に思うだろうが、米国では支持率上昇が続いている。
トランプ米大統領が不法移民の強制送還を命じたことで、米国各地で不法移民の摘発が本格化している=米中西部イリノイ州シカゴで2025年1月26日、ロイター
2015年に政界に入ったトランプ氏は、17年からの第1期政権4年間も含め、これまで常に不支持率が支持率を上回ってきた。
だが、政治情報サイト「リアル・クリア・ポリティクス」によると、全米を対象とした各種世論調査の平均値は、昨年12月に初めて支持が不支持を1・8ポイント上回った。年末にいったん不支持が増えたが、1月に入って盛り返し、支持が不支持を0・8ポイント上回る。
反トランプデモは、8年前の1期目の就任時に比べ小規模にとどまった。米国民がトランプ流に慣れ、反対派も「言っても無駄だ」とあきらめ始めたからなのか。衣料ブランドと同様、トランプ流「バナリパ」は、世界を席巻するかも。(専門編集委員)