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毎日新聞2025/1/31 東京朝刊有料記事805文字
鑑定留置のために福岡県警小倉南署を出る平原政徳容疑者を乗せた車両=北九州市小倉南区で2025年1月16日、井土映美撮影
なるほドリ 北九州市小倉南区のファストフード店で2024年12月、中学生の男女2人が殺傷された事件の容疑者が、鑑定留置(かんていりゅうち)されたと聞いたよ。鑑定留置って何?
記者 容疑者や被告の事件当時の精神状態を鑑定するため、病院などに収容する刑事訴訟法(けいじそしょうほう)に基づく処分です。医師が通常2~3カ月かけて調べます。
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Q なぜ精神状態を調べる必要があるの?
A 善悪を判断する「責任能力(せきにんのうりょく)」の有無や、罪を犯した原因が精神障害にあるのか、精神障害が犯行に影響したのかを調べます。刑法は責任能力のない「心神喪失(しんしんそうしつ)」者の行為は罰せず、責任能力が大きく低下した「心神耗弱(こうじゃく)」者の行為は刑を減軽(げんけい)すると定めています。起訴前の場合、検察側の請求に裁判所が許可を出し、検察官は鑑定結果を基に起訴するかどうかを判断します。起訴後、弁護側から請求があったり、裁判官の職権(しょっけん)で実施されたりする場合もあります。
Q どんなことを調べるの?
A 容疑者や被告の出生の状況▽成育歴(せいいくれき)▽生活環境▽犯行前後の状況--などを調べます。本人への面接が重要な作業となり、2時間程度の面接を10回以上実施する例もあります。また、鑑定医は膨大(ぼうだい)な捜査資料の読み込みも必要になります。病気が原因で精神障害が起きることもあるので、血液や尿、脳波(のうは)なども検査します。
Q 昔と比べて対象者は増えているの?
A 市民が裁判に参加する裁判員制度が09年に始まってから増加傾向にあります。08年の242人に比べ、23年は2倍超の589人が起訴前に鑑定留置されました。裁判員裁判で被告の責任能力が争点になる場合があり、検察側が立証(りっしょう)に万全を期すため積極的に請求するようになったことが背景の一つともいわれます。(社会部西部グループ)