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毎日新聞2025/2/2 東京朝刊850文字
点字の新聞「点字毎日」の紙面に触れて記事を読む=大阪市の毎日新聞大阪本社点字毎日編集部で2025年1月23日午後5時半、澤田健撮影
視覚に障害のある人たちが読み書きできる「点字」が誕生して、今年で200年になる。
考案したのは、フランス人のルイ・ブライユだ。幼くして失明し、盲学校の生徒だった16歳の時、六つの凸点を組み合わせて文字を表す点字を発明した。
展覧会で点字の考案者、ルイ・ブライユの石創画に触れる観覧者=大阪府吹田市の国立民族学博物館で2009年、幾島健太郎撮影
アルファベットや50音だけでなく、数字や音符も表せる。130余りの言語に対応しているとみられる。素早く正確に情報を得ることが可能になり、視覚障害者の生活の質が大幅に向上した。
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その恩恵について、米国の社会福祉事業家、ヘレン・ケラーは「グーテンベルクによる活版印刷の発明が人類にもたらした貢献に匹敵する」と評価した。
2022年に創刊100年を迎えた「点字毎日」の表紙。毎週1回発行し、さまざまな記事を点字で紹介している
明治期に日本へ伝わり、「日本語点字」が作られた。普及に伴って、1925年には普通選挙法で投票時の点字の使用が認められた。国政選挙における世界初の点字投票が、28年の衆院選で実施され、視覚障害者も選挙権を行使できるようになった。
現在、さまざまな場面で使用される。エレベーターのボタンや駅の階段、缶飲料、トイレの操作パネルなどに表示がある。
テクノロジーの発達で、点字による文章作成も容易になった。一般的な文字を点字へ変換し、印刷できるシステムが開発されている。海外では、点字とともに図を立体表示できる機器も登場した。
ただ、課題は少なくない。
公職選挙法は「点字は文字とみなす」としているものの、選挙公報や郵便投票については点字に関する規定がない。国政選挙は点字の公報が作成されているが、地方選の多くで対応できていない。
韓国では2017年、点字をハングルと同じように公式な文字と位置づけ、使用者の権利を保護する「点字法」が施行された。日本でも、同様の法整備を求める声が上がっている。
点字は人類が生み出した文化でもある。フランスやドイツなどでは、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産への登録を目指す動きが出ている。
点字が広く活用される環境が整備されれば、視覚障害者の社会参加も進む。誰もが生きやすいバリアフリー社会を実現する一歩にもなるはずだ。