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毎日新聞2025/2/25 東京朝刊有料記事973文字
=本人提供
事前の予測通りの結果だったが、驚いた点が二つある。一つは投票率が東西統一後で最高になる見込みであることだ。経済不況や移民・難民問題といった生活に直結する政策が争点となり、国民の関心が高まったと考えられる。
二つ目は、選挙戦ラスト1カ月で左派党が躍進し、得票率約9%を獲得したことだ。SNS(ネット交流サービス)をうまく活用する政党が左派党と移民排斥を掲げる「極右」政党AfDだが、SNSの影響力だけでなく、主要政党全体が右傾化しつつあることへの批判が影響したと言える。
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今後は、CDU・CSUと社会民主党の大連立になる可能性が高いだろう。移民対策で対立した両党だが、CDU・CSUはAfDとの連立は拒否しており、他に選択肢がないというのが実態だ。
一方、地方選挙などから予想通りとはいえ、極右の躍進は憂慮すべきことではある。経済の悪化や移民・難民の犯罪がメディアで注目される中、「自分たちの生活が変わってしまうのではないか」という国民の不満や不安を、AfDはうまく引き寄せた。
ナチスを生んだ教訓からドイツの極右台頭は遅かったが、今回で他の欧州並みの支持率になったと言える。過去の反省から、国内で連立を組む相手の政党がいないのがドイツの特徴だ。
政権に入らなければ直接的な影響はないが、議会運営ではAfDが最大野党になるため、さまざまな形で足かせになる。ウクライナ支援や軍備増強も、非常に後ろ向きなAfDと左派党が3分の1の議席を占めると、憲法改正を要するような大胆な改革ができる余地は少なくなるだろう。
一方、選挙戦終盤では特に移民・難民政策を巡り、AfDに限らず各党の政治家が分断をあおるような言説を繰り返した。右派の排外主義的な言説も目立ち、今後は社会の分断が進む可能性もある。
外交でも次期政権は厳しい課題を突きつけられている。選挙前、トランプ米政権はAfD支持を公言した。支持率に変化はなく直接的な影響はなかったと言えるが、米国がAfDを支持したという事実は重く、しこりは残る。
トランプ政権は欧州の自由民主主義に疑念を突きつけ、ウクライナ停戦交渉も欧州抜きで進めようとしている。欧州の正念場である一方、米国はドイツの最大の貿易相手国でもあり、経済に極めて影響を与える存在だ。対米関係が非常に大きな課題となるだろう。【聞き手・国本愛】