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毎日新聞2025/3/1 東京朝刊867文字
G20財務相・中央銀行総裁会議で演説する南アフリカのラマポーザ大統領=ケープタウンで2月26日、AP
大国が自国優先の論理を振りかざして多国間の枠組みを軽視すれば、国際協調は成り立たない。
世界経済の課題を協議するため、主要20カ国・地域(G20)の財務相らが開いた会議を、ベッセント米財務長官が欠席した。
国際的な課題を巡って各国が連携する場がG20である。主導してきた米国の不在は異例の事態だ。
世界経済はウクライナ危機など多くのリスクを抱える。これまで以上に協力が必要な局面にある。
G20は高関税で他国の製品を締め出す保護主義に反対し、気候変動対策にも一致して取り組む方針を示してきた。IT企業の税逃れ問題では課税強化を打ち出した。
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だがトランプ米大統領は高関税政策を乱発し、G20の合意をことごとく覆そうとしている。相手を威圧して譲歩を引き出す2国間交渉を好む姿勢が際立っている。
議長国の南アフリカは、コロナ禍で悪化した途上国の対外債務問題を主要議題に据えたが、具体的な進展はなかった。
返済に行き詰まる恐れが高いのは17カ国に上ると国連開発計画は指摘する。支援策を作るには、多くの国の調整が必要だ。
懸念されるのは、独善的なトランプ政権の影響でG20の形骸化が進むことだ。
会議には、対立する中国のほか、インドやカナダなどの閣僚も姿を見せなかった。加藤勝信財務相は国会対応を理由に出席を見送った。議論の成果を示す共同声明も採択できなかった。
米国のルビオ国務長官は、人種や性の多様性重視を掲げる南アを一方的に批判して、先週開かれたG20外相会合を欠席した。
ウクライナ危機後、日米欧と中露の対立が深まり、トランプ政権発足が分断に拍車をかけている。
トランプ氏は停戦交渉に乗り出しているが、ウクライナや欧州諸国はロシア寄りの形で進むことを危惧している。
G20は政治的な体制が異なる国の集まりで利害が対立しやすい。だがグローバルな課題には連携して取り組むのが主要国の責務だ。
なかでも米国は、首脳会議(サミット)の創設を呼びかけ、協調をリードしてきた。トランプ政権は、米国が果たしてきた役割の重みを自覚しなければならない。