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毎日新聞2025/3/5 東京朝刊843文字
トランプ米大統領(右)と会談するウクライナのゼレンスキー大統領=ホワイトハウスで2025年2月28日、ロイター
これまで守ってきた友好国を見捨てようというのか。そんな不信を抱かせる方針転換である。
トランプ米大統領がウクライナへの軍事支援を一時的に停止した、と米メディアが報じた。「(援助を)見直している」という。
停戦に向けたウクライナのゼレンスキー大統領との会談が口論の末に決裂したことを受け、強硬措置に出たとみられる。
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和平合意を急ぐトランプ氏には、最大の軍事支援国の立場を利用し、米国とロシアが進める和平交渉に応じるよう圧力をかける狙いがあるようだ。
意のままにならない相手は敵であれ味方であれ脅しをかけ、服従を強いる。独善に過ぎるトランプ氏の手法では、ウクライナが希求する「公正で永続的な和平」は果たせない。
米国はこれまで対戦車ミサイルや携行型地対空ミサイルの供与のほか、通信システムや情報の提供などさまざまな支援を行っている。多くは、他国では代替できない兵器や装備だという。
今回の措置は恒久的な支援の打ち切りではないというが、停止期間が長引けば数カ月以内に弾薬や砲弾が尽きる恐れがある。
劣勢を強いられているウクライナ軍がさらなる苦境に陥れば、ロシア軍が攻勢を強める可能性は大きい。犠牲も増えるだろう。
軍事支援をカードに市民を人質にとって取引を迫るようなトランプ氏の態度は容認できない。
急ぐべきは、両国が関係を修復し、協議のテーブルに戻って合意点を探ることである。
会談の決裂が浮き彫りにしたのは、停戦後のウクライナの安全保障を巡る考え方の違いだ。
ゼレンスキー氏はロシアの再侵攻を防ぐには米国による「安全の保証」は欠かせないと主張する。
トランプ氏は再侵攻の抑止は欧州各国が担うべきであり、和平合意が達成されればプーチン露大統領は順守するはずだと指摘し、平行線をたどった。
欧州主要国は停戦後に有志連合による平和維持部隊をウクライナに派遣することで合意した。安全保障への関与を強める姿勢だ。
トランプ氏はこうした動きを受け止め、欧州やウクライナと足並みをそろえる必要がある。