|
毎日新聞2025/3/13 東京朝刊851文字
高官協議に出席する米国のルビオ国務長官(左から2人目)、ウクライナのイエルマーク大統領府長官(右端)ら=サウジアラビア西部ジッダで2025年3月11日、ロイター
ロシアのプーチン大統領は無条件で直ちに停戦を受け入れ、ウクライナから軍を引くべきだ。
米国とウクライナの高官協議が開かれ、「即時かつ暫定的な30日間の停戦」で合意した。
停戦案は、米国が提示し、ウクライナが同意したという。米国は停止していた機密情報の共有と軍事支援を再開した。
トランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の会談の決裂によって大きく損なわれた両国関係はひとまず修復された。
Advertisement
停戦は、ロシアによる受け入れと順守を条件としている。米国は停戦に応じるよう促す意向だ。
協議ではウクライナがミサイル攻撃など空や海に限った部分的な停戦を提案したが、米国は地上を含む全面的な停戦を主張した。
ウクライナが同意した背景には、米国の支援停止が長引けば劣勢に立たされている戦況がさらに不利になるという危機感があったとみられる。
停戦後にロシアの再侵攻を防ぐ「安全の保証」には言及しなかったものの、「ウクライナの長期的な安全保障」について米国が交渉を開始する意思を示したことも、協議の進展につながった。
欧州主要国は歓迎する声明を相次いで発表した。ウクライナ支援を議論する首脳級会合を近く開催するほか、停戦後の軍の派遣についても引き続き協議するという。
米国とウクライナ、欧州各国の停戦を求める動きは、ロシアに対する圧力となるだろう。だが、先行きは見通せない。
ウクライナ東部と南部の戦闘地域は広大だ。ロシアが応じた場合でも、停戦が順守されているかどうかを把握するのは難しい。
双方が合意すれば期間を延長できる仕組みだが、互いに停戦違反を言い募れば、再び大規模な戦闘に発展する事態に陥りかねない。
停戦中の交渉が行き詰まる危険もある。トランプ氏は侵略を受けたウクライナに譲歩を迫り、妥協点を探る。思い通りに進まなければ、軍事支援の再停止をちらつかせる可能性も否定できない。
目指すべきは、ウクライナにとって公正で永続的な平和の実現だ。問うべきは、国際法を踏みにじって隣国を侵略したロシアの責任である。