パリ振り返り】エアコンなし&植物由来食…パリ五輪“意識高すぎ”選手村 選手の快適さが犠牲に
[ 2024年8月11日 22:45 ]
パリ五輪は11日(日本時間12日)、全日程を終えて閉幕する。100年ぶりにフランス・パリでの開催となった夏季五輪。26日(同27日)にセーヌ川での開会式で開幕し、17日間熱戦が繰り広げられた。一方で、誹謗中傷問題や水質問題などさまざまな議論が巻き起こった。
期間中、選手たちの生活拠点となる選手村でも、トラブルやハプニングが日々、起きた。パリ北部、セーヌ川沿いの地域に建設された選手村でまず指摘されたのは、室内の温度だった。部屋にはエアコンが設置されなかった。涼を取る手段は、1台の扇風機と、地下水を利用した床下冷房のみだった。
しかし、組織委員会の見通しは甘かった。大会期間中のパリは朝こそ涼しいものの、日中は30度を超える日も多かった。日本や米国など、エアコン慣れした先進国を中心に、簡易的なエアコンを設置した国もある。体操男子の水鳥寿思監督はSNSに「体感として、普段からあまり冷房をつけない僕はなくても大丈夫ですが多くのメンバーはこのエアコンがなかったら大変そうでした 準備いただきありがとうございます」とつづった。室内のあまりの暑さに、近くの公園で寝たというイタリア人選手も話題になった。
食事に関してもブーイングが飛んだ。選手に提供された食事は、その多くが植物由来のもの。従来の五輪から2倍に増やし、まるでビーガン食のようだった。地産地消にもこだわり、卵、肉、牛乳はすべてフランス産。その一方で、そうした動物性たんぱく質を摂れる食品が少なく、多くの選手が栄養バランスに悩まされたようだ。選手たちの要望を受け、選手村のケータリングを担当した地元企業は、肉や卵などの供給を増やした。
1924年、前回のパリ五輪で初めて導入された選手村システム。今大会は“史上最も環境に優しい五輪”をうたい、選手村の天井には多数の太陽光パネルが設置されるなど、100%再生可能エネルギーで運営された。“意識高い系”な要素をてんこ盛りにしたが、その犠牲になったのは、選手ファーストの環境だった。
ネガティブな話題が目立った選手村だったが、中には微笑ましいエピソードも。ハンドボール男子のパブロ・シモネット(アルゼンチン)は、ホッケー女子のマリア・カンポイ(同)に選手村でプロポーズ。仲間のアルゼンチン選手団に囲まれて幸せをつかんだ姿は、SNSを通じて世界中に拡散され、祝福された。2人にとってはパリは、8年前に出会った思い出の街だったという。いろいろあったパリ五輪の選手村だったが、一部の選手にとっては生涯、忘れられない場所になったようだ。