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毎日新聞2025/6/27 東京朝刊853文字
商店や住宅が建ち並んでいた広島市の中心部は焦土と化した。爆心地から北東に800メートル付近=1945年9月11日ごろ、山上圓太郎撮影
看過できない発言である。被爆の実相を直視し、認識を改めるべきだ。
トランプ米大統領が、イランの核施設攻撃を1945年の日本への原爆投下になぞらえて正当化した。訪問先のオランダで語った。
オランダ西部ハーグで、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議に合わせて会談するトランプ米大統領(右)とルッテNATO事務総長=2025年6月25日、ロイター
「広島、長崎の例を使いたくないが、本質的には同じだ。戦争を終結させた」と述べた。
米軍による原爆投下は二つの都市を破壊し、20万人を超える犠牲者を出した。放射性物質を浴びて苦しむ人は今なお大勢いる。
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被爆者の心情を傷付けることをトランプ氏は想像できなかったのだろうか。米国大統領が軽々しく引用する過去の惨事ではない。
トランプ氏は以前にも核兵器の開発を「素晴らしい偉業」と称賛し、「第二次世界大戦の終結を促した」と述べている。
背景には、投下によって大戦が終わり、多くの米兵の命を守ったとする原爆正当化論がある。トランプ氏も同じ考えなのだろう。
だが、当時の圧倒的な支持は低下し、今では賛否が割れ、批判も高まっている。こうした米国世論の変化に水をさすものだ。
核兵器は非人道的な大量破壊兵器である。「核なき世界」を提唱したオバマ元米大統領は廃絶に向けた「道義的責任」を認めた。
原爆投下に言及するのであれば、核廃絶の決意を示すときでなければならない。
むしろ、トランプ氏の発言は核拡散のリスクを高めかねない。
紛争終結のためなら核兵器の使用もためらわないという米国の姿勢を示した、と受け止める国があっても不思議ではない。
イランが核開発を諦めず、北朝鮮が核兵器配備を加速させる可能性がある。ロシアや中国を交えた軍拡競争が激化する恐れもある。
理解に苦しむのは、日本政府の対応だ。林芳正官房長官は「歴史的事象の評価は専門家により議論されるべきだ」と論評を避けた。
トランプ氏が振りかざす「力による平和」が危険なのは、核兵器の使用が具体的な選択肢になりかねないためでもある。
「核の傘」に守られているとはいえ、核兵器の非人道性を訴え、使用すべきではないと繰り返し米国に働きかける。それこそが戦争被爆国としての日本の責務だ。