53年ぶりの有人月周回ミッション「アルテミス2」打ち上げ成功、4人の宇宙飛行士が月へ
4/2(木) 21:25配信
1972年のアポロ17号以来、53年ぶりとなる有人月面探査計画の第一歩であり、女性を含む4人の宇宙飛行士が約10日間の月周回飛行を実施する。
アルテミス2打ち上げ成功、53年ぶりに挑む月面ミッションとは?
10日間にわたるミッションにおいて、オリオン宇宙船は地球低軌道を離脱し、月の裏側を周回して地球へ帰還する。飛行中、宇宙船は地球から約40万6841キロメートルの距離に到達する予定だ。これは1970年にアポロ13号が記録した40万171キロメートルを上回り、人類史上最も遠い場所への到達記録となる。 ミッションの主目的は、無人テスト飛行であったアルテミスIに続き、初めて人間を乗せた状態でSLSとオリオンの性能と安全性を実証することにある。生命維持装置や通信、ナビゲーション機能が宇宙空間で正常に稼働するかを確認するほか、ロケットの上段部分を目標物に見立てた手動での近接操作試験を実施し、将来の宇宙船同士のランデブーやドッキングに必要な技術を検証する。 飛行初期には宇宙船内のトイレ設備で不具合が発生したものの、地上チームとの連携によりデータ分析とトラブルシューティングが行われ、問題は解決された。その後、近地点および遠地点を引き上げるエンジン噴射を完了し、月へ向かう軌道への移行準備を整えた。 ミッション中には搭乗員を被験者とした医学研究も行われる。ウェアラブル端末を用いた「ARCHeR」計画では、深宇宙環境下での睡眠やストレス、認知機能の変動を監視する。また、宇宙飛行士の血液から作製された骨髄組織を含む微小な臓器チップ「Organ-on-a-chip」を活用した「AVATAR」実験を通じ、宇宙放射線や微小重力の影響を調べる。 さらに、オリオン宇宙船とロケット上段の接合部には靴箱サイズの小型衛星(キューブサット)が複数搭載されており、サウジアラビア宇宙庁による宇宙天気観測や、ドイツ航空宇宙センター(DLR)による電気部品への環境影響測定などが予定されている。これらの小型衛星は、ロケット上段が分離した後に地球高軌道へと展開される。
アポロ17号以来、月面着陸に挑む4人の飛行士それぞれが持つ「史上初」
今回のアルテミスIIに搭乗する4人の宇宙飛行士は、それぞれが深宇宙探査における新たな記録を持っている。NASA所属のクリスティーナ・コックはミッション・スペシャリストを務め、地球低軌道を越えて月周辺へと向かう史上初の女性宇宙飛行士となった。パイロットとして操縦を担うビクター・グローバーは、月へ向かうミッションに参加する史上初の白人以外のパイロット(アフリカ系アメリカ人)である。 また、同じくミッション・スペシャリストとして参加するカナダ宇宙庁(CSA)所属のジェレミー・ハンセンは、アメリカ国籍を持たずに深宇宙へと旅立つ初めての人物となる。ミッション全体を統括する司令官のリード・ワイズマンは50歳での搭乗であり、月探査ミッションに参加する宇宙飛行士として史上最年長の記録を更新した。 彼らのミッションは、NASAが推進する新たな月面探査ロードマップの重要な転換点に位置している。NASAは直近の計画見直しにおいて、月周回軌道に建設予定だった宇宙ステーション「ゲートウェイ」の計画を事実上凍結し、予算を月面基地の直接構築に振り向ける方針を明らかにした。これに伴い、後続の「アルテミスIII」は月面着陸から地球低軌道でのドッキング技術試験ミッションへと変更され、実際の有人月面着陸は2028年に予定される「アルテミスIV」へと持ち越された。 アルテミスIIの4人の宇宙飛行士が10日間の飛行を通じて収集するシステムの稼働データや人体への影響に関する記録は、この改訂された計画を進行させる上で不可欠な基礎資料となる。53年ぶりの深宇宙への到達とそこで得られるシステム検証結果は、次世代の月面基地建設やその先に続く火星探査に向けた直接的な足掛かりを形成する。
ARTEMIS II SPLASHES DOWN; CREW IN "EXCELLENT SHAPE"2026.4.11.(土)