イギリス労働党 新党首にバーナム氏選出へ 新首相就任の見込み
2026年7月17日4:47 NHK
(2026年7月17日5:27更新)
イギリスの与党・労働党の党首選挙は16日、立候補の受け付けが締め切られ、公式の発表はありませんが、イギリスメディアによりますと、マンチェスターの前市長で下院議員のバーナム氏が、無投票で新たな党首に選出される見通しです。辞意を表明したスターマー首相の後任として来週20日にもチャールズ国王の任命を受けて首相に就任する見込みです。
イギリスの与党・労働党は、スターマー首相が辞意を表明したことを受けて、7月9日から党首選挙の立候補の受け付けを行い、16日に締め切りました。
これまでに、マンチェスターの前市長で下院議員のバーナム氏が、党所属の下院議員の94%にあたる379人から推薦を得たほか、イギリスメディアによりますと、立候補に必要な数の労働組合がすでに支持を表明しているということです。
公式の発表はありませんが、バーナム氏以外に立候補に必要な推薦を得られた候補者はいないことから、バーナム氏が、無投票で17日に開かれる特別党大会で新しい党首に正式に選出される見通しで、来週20日にもチャールズ国王の任命を受けて首相に就任する見込みです。
バーナム氏は56歳。
2001年から16年間、下院議員を務め、一時期、保健相なども担った後、2017年に就任したマンチェスター市長として評価を高め、6月の議会下院の補欠選挙で当選して国政に復帰しました。
イギリス 首相の交代相次ぐ
イギリスでは首相の交代が相次いでいて、スターマー首相からバーナム氏への交代によって、この10年で6度目となります。
保守党政権下の10年前、国民投票の結果、EU=ヨーロッパ連合からの離脱が決まったことを受けて、当時のキャメロン首相が辞任しました。
続いてイギリスで2人目の女性の首相となったメイ氏は、EUとの難しい交渉にあたり離脱の条件などで合意を得ましたが、イギリス議会で支持をとりつけることができず2019年に辞任しました。
その後EU離脱派の中心的な存在だったジョンソン氏が首相に就任し、行き詰まっていたEUとの交渉をまとめて総選挙で与党・保守党を圧勝に導きましたが、2022年、新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、首相官邸でパーティーが繰り返されていた問題などを巡って党内外から厳しい批判を受け、その年の9月に辞任に追い込まれました。
さらに、その後任で、3人目の女性の首相となったトラス氏は、大型減税などの経済政策を打ち出しましたが、市場の混乱を招いて政策を撤回し、求心力が低下したため、翌月、史上最短の1か月半ほどで辞任しました。
続くスナク氏はインフレ率の低下や不法移民対策の強化などに取り組んだものの、支持率は低迷し、2024年の総選挙で大敗して14年ぶりの政権交代につながりました。
バーナム氏が目指す国内・外交政策とは?
バーナム氏の国内政策で注目されるのは、地方を重視して経済成長を実現するという主張です。
先月下旬の演説で、バーナム氏は「これまでにない最大の権力の再配分を実現する」と述べて、首相官邸の機能の一部を自分が市長を務めていたイングランド北部のマンチェスターに移すと明らかにしました。
ロンドンにある首相官邸が「ナンバー10」と呼ばれていることから、新設する組織を「ナンバー10ノース」と呼び、公共サービスの改革と再工業化、地域再生の分野で、各地方を支援していくとしています。
公共サービスについては「イギリス全土で水道や住宅、エネルギー、交通といったサービスに対する公共の管理を強化していく」と述べ、国民の暮らしに欠かせないサービスの料金を引き下げると強調しています。
市場ではバーナム氏が歳出拡大に積極的だという見方が広がっていましたが、演説の中では健全な財政運営を堅持する考えも示しています。
外交政策については、バーナム氏はスターマー首相の方針を引き継ぐとみられます。
今月8日のイギリスのタイムズ紙への寄稿では、「最も重要な防衛・安全保障の同盟国であるアメリカとの関係は今後も極めて重要であり続ける」として、アメリカとの関係を重視する姿勢を強調しています。
また、ロシアが侵攻を続けるウクライナについては「イギリスの支援は揺るぎない。イギリスと欧米の安全保障はウクライナ情勢と切り離せない」として、支援を継続する考えを示しています。
さらに、EU=ヨーロッパ連合に対しては、スターマー政権が2020年のEU離脱により冷え込んだ関係の改善をはかってきましたが、今後も移民の対策や経済安全保障などの分野でさらなる協力を進めたいとしています。
バーナム氏は2025年9月、「自分が生きているうちにEUに再加盟する姿を見たい」という発言をしましたが、ことし5月には国民投票の結果を尊重し、再加盟の検討を提案することはないという考えを示しています。
専門家「最優先すべき課題は経済成長」
イギリス政治が専門のロンドン大学クイーンメアリー校のティム・ベール教授は、新たに首相に就任する見通しのバーナム氏が最も優先すべき課題として経済成長を挙げています。
その理由として、イラン情勢を受けてエネルギー価格の高止まりが続く中で、「人々の生活費は大幅に上昇しており、多くの人は自分の給料が生活費に追いついてないと感じている。成長の再開は不可欠だ」と指摘しています。
一方で、スターマー政権が税収の確保のためにたび重なる増税を行って国民の反発を招いたことを踏まえ、「バーナム氏はどの政府も直面してきたのと同じ問題に陥る」として、歳入の確保策は依然として大きな課題となるとしています。
また、外交面では、ロシアが侵攻を続けるウクライナについて、アメリカの支援をつなぎ止めることが大きな課題だとしたうえで、まずはトランプ大統領と良好な関係を築くことに努めるだろうという見方を示しました。
さらに、現状は移民政策の厳格化などを掲げる右派政党のリフォームUKが与党・労働党を上回る支持率を維持していることから、3年後までに行われる総選挙の結果がイギリス政治の動向を左右する最大の焦点となります。
これについて、ベール教授は「リフォームUKへの支持の高さの一部は、スターマー政権への失望感に由来しているが、バーナム氏はコミュニケーション能力がありカリスマ性もある」として、右派政党に対抗できる可能性があるとの見方を示しました。
ただ、労働党の支持率回復のためには、経済、医療などの公共サービス、そして移民政策といった主要な課題について国民が改善を感じることが必要だと強調しています。