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毎日新聞2025/7/23 東京朝刊有料記事4400文字
結党から5年の参政党が、東京都議選に続き、参院選でも躍進した。「日本人ファースト」のキャッチフレーズに象徴される独自の施策には、排外的との批判も強い。にもかかわらず、有権者の一定の支持を集めたのはなぜだろうか。今後の国政にどのような影響を及ぼすのか。新興政党を分析した。
「怒り」集め 世界の潮流に乗る 白鳥浩・法政大大学院教授
白鳥浩氏=尾籠章裕撮影
私は東京都議選と参院選で、神谷宗幣代表の街頭演説に足を運んだ。聴衆は、交流サイト(SNS)などの利用に積極的な「リモート民主主義」に慣れている若い世代が多かったが、高齢者も一定数いた。演説の核は「減税」と「外国人に関する政策」だ。いずれも、「日本人ファースト」のキャッチフレーズから想起する米トランプ大統領の政策につながる。
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多くの日本人は給料が上がらず生活が苦しいのに、外資が不動産を購入し、新型コロナ後に急増したインバウンド(訪日外国人客)は高額な食事をする。物価高の問題はウクライナ戦争など外的要因もあって複雑で、たとえ政権交代が起きても簡単に解決できるわけではない。しかし、既存の政党、政治の無力さに対する、有権者の「やり場のない怒り」が、減税を掲げ、新しい政治を標榜(ひょうぼう)する参政党に向かった。
欧州の政治でも同様の動きが起きている。「ドイツのための選択肢」や「国民連合」(フランス)は、右派ポピュリズム政党と呼ばれ、共通点は減税政策や移民・難民に厳しい政策だ。参政党は、世界の潮流を理解して、意図的に政策に生かしているのではないか。
急伸した理由の一つには、既存メディアの役割もあった。日本記者クラブの討論会への出席要件は今回、直近の国政選挙での得票率が2%以上で、所属国会議員が5人以上だった。参政党は参院選直前、日本維新の会を離党した参院議員を受け入れたことにより、この条件を満たした。偶然か戦略かは不明だが、これによって神谷代表は主要政党の代表とともに何度も取り上げられることになった。
神谷代表がオレンジ色のネクタイ姿で、「日本人ファースト」というキャッチフレーズを繰り返す姿は、有権者に「ぶれない」というメッセージを植え付けた。自民党や立憲民主党と並ぶ政党として認識される「アナウンス効果」にもつながった。
以前からSNSや、短い動画を駆使して、若者世代を中心に支持を集めてきた。それだけならインディーズ政党でも可能だ。参政党は確固たる支援の拡大を考えていたのだろう。参院選では既存メディアによって自らの権威付けをすることができた。その結果、高齢者層らにも支持が広がった。
自民党は、安倍晋三元首相を支えた岩盤保守層からリベラル層までを抱える「キャッチ・オール・パーティー(包括政党)」だ。どうしても、メッセージは総花的なフワッとしたものになりやすい。だからこそ、焦点を絞った参政党のキャッチフレーズが、自民党の支持者にも響いたのだろう。
躍進の原動力は、既存の民主主義や、与党も野党も関係ない既存政治に対する「アンチテーゼ(反対意見)」。そこでは、自民がダメなら立憲にいくという従来の振り子は働いていない。参政党は今後も、一定の支持を持って国政の中で影響を与えていくと考えられる。既成政党は、多様性や他者への配慮といった価値を、有権者にさらに丁寧に伝えていく必要がある。【聞き手・岡崎大輔】
「人権」の副作用 「排外主義」へ 雨宮処凛・作家
雨宮処凛さん=手塚耕一郎撮影
自尊心を傷つけられた日本人が「この国はどうなるのだろう」と不安を抱える中での参院選だった。3年にわたる物価高騰の中、外国人観光客が日本人には手が出ない高価な物を「安い、安い」と買っていく。かつて経済大国だった日本が貧しくなったという事実を、人々は日々突きつけられている。
参政党が「日本人ファースト」を掲げ、「外国人」にターゲットを定めた時、人々は反射的に飛びついたように見えた。不安の原因を言い当てられ、「やっと敵が見つかった」という高揚感すらも見て取れた。日本では公務員、生活保護利用者、高齢者、障害者、ベビーカーの親子連れ、クルド人などを対象に、バッシングが繰り返されてきた。背景にはマジョリティー側の「自分たちは死ぬまで自己責任なのに、あいつらは得をしている」という被害者意識がある。「政府が外国人ばかり優遇するから日本人は貧しくなった」という参政党の物語の中では、人々は自己責任論から逃れられる。
「人権や多様性を唱えるリベラルのせいで息苦しい」といら立ちを募らせてきた層の受け皿にもなっただろう。参政党躍進は人権意識の高まりの「副作用」とも言える。排外主義的な政党の人気は一時的なもので終わらないと思う。
参政党は全国で街頭活動を重ね、党員を増やし、地方に150人の議員がいる。神谷宗幣代表は「一緒に政治を変えよう」と呼びかける。支持者らは、まるで仲間との冒険や成長を描いた漫画「ONE PIECE」のように感じ、「自分たちが主人公」とワクワクしながら投票したのではないか。
選挙期間中、外国人の生活保護利用率や犯罪率は高くない、など正しいデータを示し、参政党を批判する動きもあった。しかし、交流サイト(SNS)によるエコーチェンバーやフィルターバブルの結果、人々はもう見たいものしか見ない。ファクトを示す意味のない時代になりつつあることに恐怖を感じる。
神谷代表は批判されても笑顔で切り返し、冷笑的なところが一切ない。日本維新の会はかつて冷笑的な物言いで人気を集めた。石丸伸二氏もそう。誰かを「敵認定」し、見下し、たたく。しかしその手法は賞味期限切れとなった。
最も問題と思ったのは、自民党の「違法外国人ゼロ」、国民民主党の「外国人に対する過度な優遇を見直す」など、他の既成政党も外国人に関する公約を打ち出したこと。結果、「外国人」がまるで参院選の重要な争点であるかのような空気が醸成され、排外的な発言が容認されるような社会へと一気に空気が変わった。「戦争はこんなふうに始まるのか」と思った。
それでも、参政党は政治に関心のなかった層を掘り起こした。リベラルは参政党支持者を批判するだけではなく、彼ら彼女らの中にある既存の政治への不信感や絶望を知ろうとすべきではないか。
一方、参政党の言う「日本人」の定義は、今後「国のために尽くす真の日本人」などに狭まっていくのではと警戒している。【聞き手・小国綾子】
事実より感情 納得できぬ 畠山理仁・フリーライター
畠山理仁氏=武市公孝撮影
多くの有権者が生活に不安を抱え、この不安の理由は何なのかと考えている。これに対し、参政党は外国人が周囲に増えたからではないか、などと訴えかけた。自分の暮らしが苦しくなったのは外国人のせい、と感情を抱くようになった人が党の主張に賛同したとしても、不思議ではない。
しかし、参政党の主張には事実と異なることがある。外国人が増え、犯罪が増加したというデータはない。漠然と不安を感じる人が思わずうなずいてしまうことを提示し、支持を集めている。
参院選期間中、ある候補が演説で「外国人の犯罪が増えている」と言い切っていた。私が候補者に取材で「減っている」と指摘すると、「それは人の受け取り方次第で、感情の問題です。それぞれでいいんじゃないですか」と返ってきた。客観的な事実を説明しても翻意せず、人々が思っている感情を大切にしているとの姿勢はとても納得できるものではない。
党が急拡大した弊害が出ている。もともとの支援者は礼儀正しい人が多かったとの印象がある。東京都議選、参院選と注目が集まり、支援者が急増した。候補者の街頭演説では支持者が詰めかける一方で、党を批判するプラカードを掲げるアンチを多く見かけるようになった。支持者が、こういう人に「妨害だ」と声を上げたり、体を押してもみ合いになったりすることが頻繁に起きている。昔の支持者なら、もっと冷静な対応をしていたかもしれない。
2020年の結党時からウオッチしてきた。参政党は、積極的に投票に行かなかった人たちに手を広げ、参加しようと呼びかけてきた。当時の支持者は自分が「政治の主役」と気づかされ、希望を持っていた。既存政党がこうした語りかけをしなかったわけではないが、効果的な訴えはできなかった。参政党のビラは目を引きやすいよう工夫され、「政治はロックだ!」といった呼びかけもたくみだ。
一方、参政党が目指す日本という国の国家像について、把握している支持者はどれほどいるのか。5月に発表した「新日本憲法(構想案)」は、現行憲法で非常に大きな柱である国民主権が記述されておらず、国民の定義は「日本を大切にする心」を持っているなどとしている。思想調査をすると宣言しているとも考えられ、問題がある。
爆発的に支持が高まったのは、所属国会議員が5人に増え、国政政党の要件を満たした影響が大きい。ネットや交流サイト(SNS)中心の発信だったが、テレビ・新聞の討論会参加基準を満たして露出が増えた。大手メディアを情報源としていたり、既存政党を支持したりする人々にも存在が知られるようになり、自民党支持者らを引き込んでいる。
今後について、例えば、著名な自民党の大物政治家などを引っ張ってくることに成功すれば、勢力が定着する可能性はある。反対に、こうした動きがなく、憲法の構想案の問題点などが知れ渡り、主張のブレが目立ってくると、伸び悩む可能性がある。【聞き手・山本太一】
参院議席は15に
参政党は2020年、「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」を合言葉に政治団体として設立された。22年の参院選の比例代表で約177万票を集め、1議席得て国政政党になった。党綱領では「天皇を中心に一つにまとまる平和な国」づくりを掲げる。6月の東京都議選は初挑戦で3議席を獲得。20日に投開票された参院選で非改選と合わせた議席は2から15に増えた。
「論点」は原則として毎週水、金曜日に掲載します。ご意見、ご感想をお寄せください。 〒100-8051毎日新聞「オピニオン」係 opinion@mainichi.co.jp
■人物略歴
白鳥浩(しらとり・ひろし)氏
1968年生まれ。博士(政治学)。静岡大助教授、英オックスフォード大客員フェローなどを経て2007年から現職。専門は現代政治分析と政治学。
■人物略歴
雨宮処凛(あまみや・かりん)氏
1975年生まれ。右翼活動家などを経て、格差・貧困問題に取り組む。「死なないノウハウ」「難民・移民のわたしたち」など著書多数。
■人物略歴
畠山理仁(はたけやま・みちよし)氏
1973年、愛知県生まれ。早稲田大在学中から取材・執筆活動を開始。関心テーマは政治家と選挙。主著に「黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い」。