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毎日新聞2025/8/27 東京朝刊有料記事1003文字
日々、地域住民を運んで奮闘するローカル線。しかし、経営はどこも火の車だ=千葉県銚子市で2025年7月2日午後、赤間清広撮影
<sui-setsu>
2・7万キロ。国内に張り巡らされたJR、私鉄を合わせた鉄道の総延長だ。日本は世界でも有数の鉄道大国と言っていい。
しかし、その足元は揺らいでいる。中でも人口減少が著しい地方のローカル線は赤字経営を強いられ、青息吐息の状況だ。
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ローカル線を救うヒントはないのか。千葉県銚子市を訪ねた。
古びた木造の駅舎。ここに銚子―外川間6・4キロを結ぶ銚子電気鉄道の本社がある。
銚子電鉄の竹本勝紀社長。本業は税理士だ=千葉県銚子市で2025年7月2日午後、赤間清広撮影
「正直、乗客を増やすだけでは限界がある」。こう訴えるのは、社長の竹本勝紀さん(63)だ。
鉄道は「金食い虫」である。
安全を維持するためには車両に加え、線路や踏切の改修が恒常的に必要となる。
仲ノ町駅を併設した銚子電鉄の本社。戦前に建てられたものだという=千葉県銚子市で2025年7月2日午後、赤間清広撮影
運賃だけでは賄えず、多くのローカル線は行政からの補助金で生きながらえているのが現実だ。
竹本さんの本業は税理士。2005年に銚子電鉄を手伝い始めて間もなく、絶体絶命の危機に見舞われた。経営陣の不祥事などが重なり運転資金がほぼ底を突いた。
会社を救ったのは、当時の経理課長が無我夢中でホームページに打ち込んだ、こんな一文だ。
「ぬれ煎餅を買ってください」「電車修理代を稼がなくちゃ、いけないんです」
「ぬれ煎餅」「まずい棒」などは駅でも購入できる。日々、品質向上に向け研究を重ねているとか=千葉県銚子市で2025年7月2日午後、赤間清広撮影
ぬれ煎餅は駅などで販売していた、いわば銚子電鉄の副業だ。悲痛な訴えが話題となり、全国から注文が殺到した。
「副業があったからこそ、鉄道が存続できた」。12年に社長に就いた竹本さんは、鉄道以外の収益をいかに確保するかが「ローカル線が生き残る必須条件」と語る。
ローカル線は住民の「足」であると同時に、地域にとっては貴重な「広告塔」でもある。話題になれば全国ニュースにもなる。
広告塔として、できることは何でもやった。沿線企業と協力しぬれ煎餅に続く商品も次々、開発。その際、必ずユーモアを添えた。
例えば、棒状のスナックは「まずい棒」と名付けた。経営がまずいことを自虐した商品名だ。路線の愛称も4月から「犬吠崖っぷちライン」に。まず注目を集め、それを収益につなげる戦略がある。
銚子電鉄「仲ノ町駅」の駅名標。「犬吠崖っぷちライン」の名前もある=千葉県銚子市で2025年7月2日午後、赤間清広撮影
銚子電鉄の年間売上高は約6億円。このうち鉄道収入は1億円程度しかない。残りを物販など鉄道外収入で稼ぎ出す。
「何もしなければ潰れるだけ。リスク覚悟で、動き続けるしかない」。地元を盛り上げるためならば、白い目で見られても構わない。そんな覚悟に圧倒される。
時代の変化に対応できない企業は淘汰(とうた)される。道をひらくのは、あきらめない精神だ。(経済部)