|
|
毎日新聞2025/9/14 東京朝刊有料記事2351文字
<気になる>
国際連合(こくさいれんごう)(国連、本部・ニューヨーク)が10月に創設80年を迎えます。国連は戦後の国際秩序(ちつじょ)の安定や人道状況の改善(かいぜん)に貢献(こうけん)してきた一方、近年はロシアによるウクライナ侵攻(しんこう)やイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突(しょうとつ)に十分対応できず、「機能不全(きのうふぜん)」に陥(おちい)っているとの批判(ひはん)も高まっています。国連はどのようにして生まれ、今どんな課題(かだい)に直面しているのでしょうか。
◆創設の目的は?
大戦防ぎ世界平和を目指す
なるほドリ 国連って何をするところなの?
記者 世界の平和と安全の維持(いじ)を目指して、国家が協力するための国際組織です。1945年10月24日に正式に発足し、現在193カ国が加盟(かめい)しています。全加盟国が議席を持つ国連総会をはじめ、安全保障理事会、経済社会理事会など六つの主要機関があります。
Advertisement
Q そもそも、なぜ国連ができたの?
A 世界戦争を防げなかったという過去の失敗と教訓(きょうくん)が背景にあります。第一次世界大戦(14~18年)後、国連の前身である国際連盟が設立されましたが、米国は議会の反対で参加せず、領土や軍備拡張(ぐんびかくちょう)を目指していた日本、ドイツ、イタリアなどが途中で脱退(だったい)しました。国際連盟は有名無実化し、39年に第二次世界大戦が勃発(ぼっぱつ)しました。
2度目の世界大戦を防げなかった反省から、より強力で実効性(じっこうせい)のある国際組織の必要性が認識され、第二次大戦後に戦勝国を中心とした国連が発足しました。敗戦した日本は、56年12月に80番目に加盟しました。
Q 国際連盟から国連になって何が変わったの?
A 国際連盟の議決は全会一致が原則で、侵略国への対応も経済制裁にとどまり、スピード感と実効性に欠けていました。そのため国連では多数決制が採用され、軍事的な制裁も可能になりました。
国連で制裁などの強制措置を決定する重要な役割を与えられたのが安保理です。米露英仏中の常任理事国5カ国と非常任理事国10カ国(任期2年)で構成されています。日本は過去に非常任理事国を12回務めた経験があります。
安保理の決議は国連の中で唯一(ゆいいつ)、法的な拘束力(こうそくりょく)を持ち、多国籍軍による武力行使などを認めることが可能です。全ての加盟国が安保理の決議に従わなければなりません。
Q 安保理には強力な権限があるんだね。
A はい。特に常任理事国5カ国の地位は別格です。法的拘束力のある決議は安保理15カ国のうち9カ国以上の賛成で成立しますが、常任理事国が1カ国でも反対すれば、採択(さいたく)されません。これは「拒否権(きょひけん)」と呼ばれる特権です。かつて国際連盟が大国の相次ぐ脱退で実効力を失った教訓を踏(ふ)まえて導入(どうにゅう)されました。利害の対立する大国を国連にとどめる効果がある一方、紛争解決の障壁(しょうへき)になるケースも少なくありません。
Q どういうこと?
A 例えば、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻では、ロシア軍の即時撤退(そくじてったい)を求める決議案が採決にかけられましたが、ロシアが拒否権を行使しました。侵略行為を止められない国連に対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「人類はもはや国連に期待できない」と失望感をあらわにしました。
また、23年10月からのイスラエルとハマスの戦闘(せんとう)でも、パレスチナ自治区ガザ地区での即時停戦(ていせん)を呼びかける決議案などに対し、イスラエルを支持する米国が繰り返し拒否権を発動しました。深刻化する人道危機に対応できず、国連のグテレス事務総長は「(安保理が)機能不全の状態にある」と指摘(してき)しました。
◆安保理の課題は?
常任理事国の構成変わらず
Q 安保理の仕組みは変わらないの?
A 以前から変えようとする動きはあります。国連の加盟国は創設時の51カ国から大幅(おおはば)に増えましたが、常任理事国の構成は当時から変わっていません。戦後に経済成長を遂(と)げた新興国(しんこうこく)などが含(ふく)まれておらず、地域のバランスに欠けているとの批判があります。
日本政府は90年代から常任理事国入りへの意欲(いよく)を表明し、常任・非常任理事国双方の数を増やす改革案を提示してきました。戦後に独立を果たしたアフリカ諸国なども、公平性の観点から常任理事国入りを主張(しゅちょう)しています。拒否権の廃止(はいし)を求める意見もありますが、こうした改革案に常任理事国は消極的(しょうきょくてき)で、議論は進んでいません。
Q 安保理以外にも国連の課題はあるの?
A はい。国連は加盟国による分担金(ぶんたんきん)などで運営されていますが、最大の負担国である米国が難色を示しており、深刻な財政難(ざいせいなん)に直面しています。
25年の国連通常予算37・2億ドル(約5400億円)のうち、米国の分担率は22%を占めます。「米国第一」を掲(かか)げるトランプ米大統領は国の経済力などで決まる分担率を「不公平だ」と批判し、拠出額(きょしゅつがく)を大幅に削減(さくげん)する方針を打ち出しました。
資金不足に悩む国連は組織の「効率化(こうりつか)」を目指して大規模な組織改革に取り組んでおり、部局の統廃合による職員の削減や本部業務をケニアのナイロビに移す案などが検討(けんとう)されています。(外信部)<グラフィック 大井美咲>
質問は〒100―8051毎日新聞「なるほドリ」係。QRコードでも募集しています