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毎日新聞2025/12/9 東京朝刊862文字
米国の生成AIアプリ「パープレキシティ」=東京都千代田区で2025年12月、平川義之撮影
生成AI(人工知能)による検索サービスが普及し、ニュース記事の無断利用が問題化している。
初期の生成AIは過去の学習データに基づいて利用者の質問に答えていたが、最近はネット上の最新情報を含めて回答が可能なAIが普及しつつある。
その先駆的存在である米国のパープレキシティは、回答に情報源のリンクを明示して透明度を高めることで利用者を増やしてきた。生成AIは、回答の根拠が不明確で「ブラックボックス」との批判も多かったためだ。
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しかし、パープレキシティは各国の報道機関のウェブ記事を無断で収集し、リンクと同時に記事と同内容の要約文を回答として表示することがある。記事の内容と異なる要約も確認されている。
毎日新聞からも少なくとも数十万本の記事が収集され、記事と酷似した文章が回答として表示されていた。毎日新聞社は著作権法などに触れる疑いがあるとして運営会社に抗議書を送った。損害賠償を求めて提訴する報道機関も国内外で相次いでいる。
利用者がAIの回答を読むだけで元記事にアクセスしなくなれば、報道機関は購読者や広告収入獲得の機会を失う。経営体力を奪われ、人々の知る権利に応える綿密な取材が難しくなる。
偽・誤情報が大量に出回る昨今、報道機関が裏付けを取った上で配信する記事の重要性は高まっている。記事を利用するのであれば、制作している側に相応の対価を支払うのが筋である。
AIに学習させる質の高い情報を求めて報道機関との連携を模索する事業者もある。チャットGPTを運営するオープンAIはAP通信などと提携した。パープレキシティもメディアに収益を還元する仕組みを始めた。報酬は十分か、記事が正しく使われているか、厳密な検証が求められる。
国内では、2018年の著作権法改正でAI学習のためのデータ利用は保護の例外とされたが、AI検索のような使われ方は想定されていなかった。技術の進展に応じた制度の見直しが必要だ。
ニュース記事は報道機関がコストと時間をかけて取材・編集し、発信している知的財産である。「ただ乗り」は許されない。