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立秋を過ぎても、まだまだ暑い日が続きます。この季節、高温多湿の環境や強い紫外線の影響を受けるため、皮膚にはさまざまなトラブルが起こりやすくなります。あせも、日焼け、虫刺され、とびひ、水いぼなどが代表的ですが、何を基準に薬を選んでいますか。夏の皮膚トラブルと薬について解説します。
抗生物質が配合された薬も――日焼け
夏の強い日差しで起こる日焼けは、皮膚の軽いやけどです。赤みやヒリヒリ感があるときには、まず冷却と保湿が基本ですが、薬選びでは、殺菌消毒作用や消炎・保護作用の成分が配合されているものを使います。水ぶくれができたり、全身症状があったりした場合には、医療機関の受診をお勧めします。
市販の薬では「パンパス軟膏」「キップパイロール-Hi」などがあります。これらの薬には、消炎・保護作用のある酸化亜鉛や殺菌消毒作用のあるフェノール、角質軟化作用のあるサリチル酸などが配合されています。
化膿(かのう)や赤み、腫れなどの症状がある場合には、抗生物質やステロイドが配合されている「ドルマイシン軟膏」「フルコートF」などの商品がいいでしょう。
抗生物質には細菌の増殖や生存を阻害し、感染症の進行や悪化を防ぐ効果があります。ステロイドには炎症やアレルギー反応を抑える働きがあります。ステロイドの強さはweakからstrongestまで5段階に分かれますが、多くの市販の外用薬にはweakタイプが配合されています。
ステロイドは怖くない
ステロイドと聞くと、怖がる人もいるかもしれません。主成分は副腎皮質ホルモン(コルチコステロイド)であり、抗炎症作用、免疫抑制作用、血管収縮作用などがあります。湿疹、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、虫刺され、乾癬(かんせん)など、多くの炎症性皮膚疾患の治療に用いられます。
皮膚の炎症やかゆみをしっかり抑えるので、とてもよく使われている薬です。ところが、昔から「怖い薬」というイメージを持つ人が少なくありません。その背景には、いくつかの出来事が関係しています。
一つは、肌をきれいに見せるために、強めのステロイドを下地クリームとして、顔に長い間たくさん塗り続けるケースがありました。すると皮膚が薄くなったり、赤ら顔になったり、ニキビのようなぶつぶつが出たりしました。これは正しい使い方から外れてしまったときに起こりやすい副作用です。
日焼けや虫刺され防止のため額に黒い布を巻いて稲刈りを体験する児童ら=山形県酒田市飛鳥で、高橋不二彦撮影
また、アトピー性皮膚炎などで長くステロイドを使っていた人が、急に使用をやめると、症状が一気に悪化することがあります。これは「リバウンド」と呼ばれ、本来、病気の性質によるのですが、ニュースなどが「ステロイドのせいでやめられなくなる」と報じたため、多くの人が不安を感じるようになりました。
さらに1990年代には「ステロイドは危険だから使わない方がいい」という考えが広まり、ステロイドを全く使わない治療法(脱ステロイド)が注目を集めました。しかし自己判断で薬をやめた結果、かえって症状がひどくなる人が続出し、大きな混乱につながりました。
このように、ステロイドの塗り薬そのものが問題を起こしたわけではありません。けれども、誤った使い方や偏った情報の伝え方が重なり、社会に「怖い薬」というイメージが強く残ったのです。医師や薬剤師の指示に従って正しく使えば、安全でとても頼りになる薬です。
かゆみの原因はヒスタミン
夏は蚊やブヨなどの虫に刺される機会も多くなります。刺された部位は強いかゆみや赤みを伴います。一般的には抗ヒスタミン薬の外用薬で対応しますが、腫れが強いときには、ステロイド外用薬が効果的です。かゆみが全身に広がるような場合には、抗アレルギー薬の内服が必要になることもあります。
市販薬で、炎症やアレルギー反応を抑えるステロイドが配合されている商品には「液体ムヒS2a」「ムヒアルファEX」「ウナコーワクールα」「マキロンパッチエース」があり、クリームやローション、パッチなどさまざまなタイプがあります。貼り付けるパッチタイプだと、かけないので子どもに適しています。
一方、ステロイドが配合されていない商品には「ムヒS」「キンカン」「ウナコーワクール」「ムヒパッチA」などがあります。かゆみ止め成分(クロタミトンなど)、非ステロイド抗炎症成分(イブプロフェンピコノール、ウフェナマートなど)、抗ヒスタミン成分が配合されています。
ヒスタミンは、じんましんや虫刺されなどがあると細胞から放出される物質です。放出されたヒスタミンは、皮膚にある受容体に作用して血管拡張や体液の透過性の高進を引き起こし、赤い発疹やむくみ、かゆみを生じます。
抗ヒスタミン薬の外用剤は、皮膚におけるヒスタミンの受容体をさえぎる働きがあります。
市販薬で主に配合されているのは、第一世代と呼ばれる抗ヒスタミン薬(ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミンなど)で、即効性があります。症状が持続する場合は、外用ステロイドや飲み薬の抗ヒスタミン薬へ切り替えます。
=ゲッティ
ヒスタミンを放出する細胞は肥満細胞と呼ばれます。皮膚や鼻、気管、腸といった外の世界とつながっている場所にたくさんあり、花粉やホコリ、細菌や寄生虫など、体に入ってきた異物に素早く反応する「免疫の見張り番」のような働きをします。花粉症やじんましんのときに症状が出るのも、この肥満細胞が関わっています。
「肥満」といっても体格の肥満とは関係ありません。顆粒(かりゅう)をたくさんためこんでパンパンにふくらんで見えるため、昔の学者が「栄養をいっぱい持った細胞」と考えて、ドイツ語で「肥育する」という言葉を使ったのが始まりです。そこから日本語では「肥満細胞」と呼ばれるようになりました。
ひどいあせもにもステロイド配合は有効
あせもは、多量にかいた汗が皮膚の外へ正常に排出されず、汗の通り道(汗管)が詰まってしまうことで起こる発疹です。特に高温多湿な環境や運動などで大量の汗が皮膚にたまると、これが皮膚の内部に染み出し、かゆみや赤み、ぷつぷつ(水疱<すいほう>)などを引き起こします。汗がたまりやすい場所(顔・首・背中・わきの下・ひじやひざ裏)などに出やすく、摩擦や締め付けの強い部分にも多く見られます。
あせもは、主に水晶様あせも、紅色あせも、深在性あせもの3タイプに分けられます。水晶様あせもは、皮膚の浅い部分に汗がたまり、透明な小さな水疱ができるあせもで、かゆみや赤みは少ない。紅色あせもは最も一般的なタイプで、赤いぷつぷつした発疹ができ、強いかゆみやちくちくとした痛みを伴う。深在性あせもは皮膚の深い部分(真皮)に汗がたまり、白っぽい平らな発疹が広範囲にできるものをいいます。深在性あせもは繰り返すうちに発症しやすい。
あせもの手当て(対処法)は、衣類や冷房を工夫して、汗をかかないようにして、皮膚を清潔に保つことに尽きます。
あせもができた場合も、多くの場合は清潔と冷却で改善しますが、かゆみが強ければ抗ヒスタミン薬入りの外用薬を使用します。炎症がひどいときには軽めのステロイド外用薬を使用します。
軽い場合は、ステロイドを配合していない「ユースキンリカAソフトあせもクリーム」「アセモアパウダースプレー」「レスタミンコーワパウダークリーム」などで十分ですが、かゆみや炎症がひどい場合は、ステロイド配合の「アセムヒEX」「オイラックスPZリペア軟膏」「コートfMD軟膏」がいいでしょう。
強い炎症や広範囲に症状がある場合には受診をお勧めします。医療用では強い効き目のステロイドが配合された塗り薬があります。また、全身症状がある場合は、抗アレルギー薬の内服薬が処方されることがあります。
医療機関での対応が必要――とびひ・水いぼ
皮膚のかゆみや傷をかき壊すことで起こるのが「とびひ(伝染性膿痂疹<のうかしん>)」です。黄色ブドウ球菌や溶連菌といった細菌が皮膚に感染して、うみを含んだ水ぶくれやかさぶたが広がっていきます。治療には抗菌薬の外用薬が使われ、重症の場合には抗生物質の内服薬も必要になるので、医療機関への受診が必要です。
プールなどで感染する水いぼは、ウイルスによって小さな光沢のあるブツブツができるものです。特別な治療をしなくても数カ月から1年ほどで自然に治ることが多いですが、かき壊して広げないようにすることが必要です。かき壊しや二次感染を防ぐため、必要に応じて皮膚科でピンセット除去や液体窒素療法などを用いることもあります。
夏の皮膚トラブルにはいくつかのパターンがあり、それぞれに適した薬があります。大切なのは、患部を清潔に保ち、必要以上にかかないこと、そして症状が強い場合は、自己判断せずに医師や薬剤師に相談してください。
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坂口真弓
薬剤師
さかぐち・まゆみ 東京薬科大客員教授。千葉大大学院修了。東京大病院薬剤部勤務を経て、東京都台東区に「みどり薬局」など3店舗を開設。著書に「OTC医薬品の比較と使い分け」(羊土社)など。